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2025-09-22 ドル円週報

2025-09-22 · fx
最終更新: 2025-09-22
FXUSDJPYWeekly

該当週のドル円の動きを概観し、主要指標と戦略を整理。

#概要

先週は米連邦公開市場委員会FOMC)が予定通り0.25%の利下げを実施し、政策金利の誘導目標を4.00–4.25%へ引き下げた。パウエル議長は記者会見で「労働市場の悪化リスクが高まり、追加の利下げが必要になる」と述べ、10月・12月会合でさらなる利下げを示唆した。新しいドットチャートでは2025年末のフェデラルファンド(FF)金利中央値が3.6%と、6月時点の3.9%から低下し、年内にあと2回(計50bp程度)の追加利下げが見込まれている。

一方、日本では8月全国CPIが前年比+2.7%と9か月ぶりの鈍化を示し、食料・エネルギーを除くコア指数は+3.3%と高止まりした。石破首相の辞任表明を受け、自民党総裁選(10月4日予定)までの政治空白が続く。後継候補に積極財政派の高市早苗氏や改革派の小泉進次郎氏が挙がり、市場は日銀10月会合での利上げ確率を2〜3割程度まで低下させた。

さらに、フランス政局の混乱が続き、フィッチが同国の格付けをAA−からA+へ引き下げ、政治不安や財政悪化を理由に安定的見通しとした。格下げが欧州金利を押し下げユーロ安・円高要因となる一方、中東ではイランとイスラエルの軍事衝突が再び激化し、米国の介入が強まれば安全資産としてのドルと円が選好される。こうした複合的な要因により、ドル円は上下いずれにも振れやすい地合いが続きそうだ。

#前回の結果(答え合わせ)

前週は145.80〜149.80円のレンジを想定したが、FOMC前の警戒感から円買いが優勢となり、週末にかけて上値が重かった。オンライン為替データによれば、9/15〜9/21のドル円は高値148.325円、安値145.955円で推移し、想定レンジ内ながら上値が148円台前半にとどまった。終値は147円台半ばで、FOMC後に一時146円台前半まで下落したもののすぐに回復した。想定より弱含んだ背景には以下が挙げられる。

  • 米CPIが予想比下振れし、コア指数が前年同月比+2.4%へ鈍化したこと。これにより利下げ観測が強まりドル売りが先行。
  • 石破首相辞任による政局不安で円買いが進んだ。
  • フランス首相罷免・格下げ懸念がユーロ売り・円買いを促した。
  • FOMC会合を控えたポジション調整により149円台への上昇が抑えられた。

#米国要因

#FRB関連発言と市場の織り込み

発言者・イベント内容・評価市場織込み/影響
パウエル議長(9/17会見)利下げは労働市場の悪化リスクに対応したものであり、「インフレを注視しつつ最大雇用の達成に努める」と述べた。ドットチャートでは年内2回の追加利下げを示唆。10月会合での25bp利下げを90%超織り込み、さらに12月にも利下げが見込まれる。タカ派トーンが弱まったことでドル円は下押し。
ウォラー理事(8/28講演)「9月会合で0.25%の利下げを支持し、3〜6か月かけて中立金利(約3%)へ段階的に引き下げるべき」と発言(前週報告参照)。市場は年内に2〜3回の利下げを織り込み、年末FF金利が3.6%程度になると見込む。
クック理事(1/6講演)労働市場は底堅くインフレも粘着的であるため、利下げは慎重に進めるべきと指摘(前週報告参照)。ハト派理事との温度差が残り、FOMC内での意見対立が相場の不透明感を高める。
FOMC声明(9/17)経済活動の成長は鈍化し失業率は上昇傾向であると指摘。目標達成に向け、FF金利の誘導目標を1/4ポイント引き下げ4.00–4.25%とした。投票ではミラン理事が「0.5%利下げ」を求めて唯一反対した。声明はリスクバランスの悪化を強調し、今後もデータ次第で政策を調整するとした。市場は追加利下げを既定路線と認識。

米金利先物では次回10月会合での0.25%利下げ確率を9割以上織り込んでおり、0.50%の利下げ確率はわずか数%にとどまる。政策金利の中央値は9月会合後のドットチャート2025年3.6%、2026年3.4%、2027年3.1%へ引き下げられた。これは6月時点の3.9%、3.6%、3.3%から低下しており、市場より若干ハト派な見通しである。

利下げ幅ごとの想定水準(9月会合以降)

利下げ幅FF金利目標ドル円水準感
据え置き(0bp)4.00–4.25%148〜150円台(米金利高止まりで円売り優勢)
▲0.25%3.75–4.00%146〜149円(押し目買いと戻り売りが交錯)
▲0.50%3.50–3.75%144.5〜147円(利下げ加速で円高圧力)

#今週の米主要経済指標とシナリオ

9月22日週は、米国のマクロ指標がFOMC後の景気評価材料となる。以下では主要イベントを日付順に整理し、結果の強弱によるドル円への影響を考察する。

日付 (JST)指標・イベント市場予想・注目点強弱シナリオ
9/23(火)S&Pグローバル米国PMI速報(製造業・サービス業)前月をやや上回る50台半ばが見込まれている。50を大きく上回れば景況感改善で米金利が反発→ドル買い・円売り。50割れなら景気減速懸念→円買い。
9/24(水)新築住宅販売件数(8月)7月の利下げ効果が出るか注目。販売が増加し建設セクターの底堅さが確認されればドル買い。反対に減少すれば米金利低下で円高。
9/25(木)Q2 GDP第3次見通し、既存住宅販売件数、耐久財受注、週次新規失業保険申請件数、貿易収支(速報)GDPは年率1.6%程度に上方修正される見通し。耐久財は7月の‐2.8%から反発が期待される。GDPや耐久財が予想を上回れば景気堅調でドル買い。失業保険申請が増加し耐久財が低迷すればリセッション懸念→円高。
9/26(金)PCEデフレーター(8月)、個人所得・支出、ミシガン大学消費者信頼感(9月確報)PCEはFOMCの注目指標で、前年比3%前後。PCEが予想を上回ればインフレ粘着的と受け止められ利下げ観測後退→ドル買い。下振れなら利下げ確度上昇→円買い。消費者信頼感の悪化はリスクオフを誘発。

翌週には耐久財・新規住宅着工の確報や個人消費支出(PCE)の翌月分が控えるが、今週のデータが大きくブレなければ市場は10月FOMCの0.25%利下げを既定路線とみなすだろう。

#日本要因

#インフレ・経済指標

  • 全国CPI (8月):総合指数は前年比+2.7%、食料を除くコア指数は+3.3%と引き続き高水準。一方、基調的インフレ率(生鮮食品とエネルギーを除く)は1.6%程度に過ぎないと氷見野副総裁が指摘し、日銀は慎重な政策運営を続ける姿勢を示した(9/2講演)。

  • 東京都区部CPI (9月速報):9月26日に公表予定。7月・8月の全国指標同様に鈍化するか注目。上振れすれば10月会合での利上げ観測が再燃し円高要因となる。

  • 雇用統計 (8月):失業率・有効求人倍率は10月3日に発表予定。市場では失業率2.5%前後で横ばいが見込まれる。

  • 国債入札:9月17日に20年債入札(発行額約8,000億円)、18日に短期国債入札(約4,300億円)が実施された。超長期債需要が堅調であれば金利上昇が抑制され円安材料となるが、不調の場合は金利が上昇し円高圧力となる。

#日銀・要人発言

  • 氷見野副総裁(9/2):基調的なインフレ率は1.6%程度にあり、物価目標2%を安定的に達成するには時間がかかると述べた(前週報告参照)。緩和修正には慎重姿勢。

  • 中川審議委員(8/28):労働需給の逼迫から基調的インフレが再び2%へ向かうと指摘し、7月会合で決定した0.5%の政策金利と国債買い入れ漸減方針を維持しつつ、見通しが実現すれば追加利上げを検討すると述べた(前週報告参照)。

  • 市場織込み:石破首相の辞任により日銀10月会合での0.25%利上げ確率は20〜30%程度に低下。9月下旬〜10月初旬の自民党総裁選で積極財政派が選出されれば財政拡張が意識され円高要因、逆に改革派なら緩和継続が意識され円安要因となる。

#政治・地政学要因

  • 国内政局:石破首相は9月9日に辞任表明し、自民党は10月4日に新総裁を選出する予定。高市早苗氏や小泉進次郎氏が有力候補とされるが、選挙手続きが複雑で政治空白が長引く可能性がある。政治不安は円買い圧力となる一方、新政権の政策次第では財政拡張期待から円安圧力に転じる可能性もある。

  • フランス政局:フランス議会は財政緊縮策を巡って首相を罷免し、フィッチはフランスの長期信用格付けをAA−からA+へ引き下げた。フィッチは「今後数年にわたり債務安定化の道筋が見通せない」と指摘し、格付け引き下げが他社にも波及すればフランス国債の強制売却を誘発する恐れがある。ユーロ安が円買いに繋がりやすい。

  • 中東情勢:6月下旬からイランとイスラエルの軍事衝突が再燃し、米国はイランの核施設への空爆を行った。報道によると、イランは米軍基地に向け6発のミサイルを発射し、イスラエルはイラン国内の施設を報復攻撃した。緊張が高まるたびに安全資産の金や円が買われる傾向があり、米国が関与を強めればドル買い要因にもなるが、リスクオフでは円買いが上回ることが多い。

#レンジと戦略

#想定レンジ

来週(9/22〜9/27)のドル円は145.00〜149.50円を想定する。FOMC後の利下げ織込みと米経済指標の波乱要素に加え、日本の政治・経済指標が複雑に絡み合い、広めのレンジを設定する。

#注目水準

タイプ水準解説
上値目線148.50円FOMC後の戻り高値付近。強い米指標やリスクオンで試す水準。
149.00円心理的節目。ここを超えると149円台半ばまで伸びやすい。
149.50円150円手前の介入警戒ゾーン。押し目待ちの売りが控える。
下値目線145.50円9/17の安値近辺。割り込むとテクニカル的に下げ加速。
145.00円介入水準とされるため、市場は警戒。
144.50円50日移動平均付近で強いサポート候補。

#エントリーポイント

  • 押し目買い:145.00〜145.50円にかけて分割で買い。ストップロスは144.30円。利食い目標は148.00円。FOMC後の下落で買い場が来れば、米経済指標が底堅ければ反発が期待できる。

  • 戻り売り:149.00〜149.40円で売り。ストップロスは150.50円。利食い目標は146.00円。FRBの利下げ継続観測と日本の政治不安が残る中、高値でのドル買いは慎重に。チャート上の抵抗線に引きつけて売る。

  • ポジション調整:9/25の米GDP改定値や9/26のPCEデフレーター、9/26の東京都区部CPIなどイベントが多い。イベント前後はポジションを軽くし、結果確認後に追随する姿勢が望ましい。特にPCEはFOMCの判断材料となるため、発表前後のボラティリティが高まりやすい。

#シナリオ分岐

シナリオ条件想定ドル円水準
ベースシナリオ(50%)米経済指標が総じて市場予想並み(GDP改定値が1.6%程度、PCEが3%前後)。FOMCはハト派を維持し10月に0.25%利下げの見方が強まる。日本のCPIは鈍化し、総裁選は穏健派が優位。146.0〜148.5円で推移。PCEやGDPが無難なら148円台で戻り売りが出やすい。
上振れシナリオ・円安(30%)米PMIや耐久財・住宅指標が予想を上回り、インフレ指標も粘着的。パウエル議長が利下げペースに慎重姿勢を強調。中東情勢の緊張緩和。日本のCPIが予想を下回り利上げ観測が後退。149円を上抜け150円台を試す。介入警戒が強まり、短期的に上値は限定的。
下振れシナリオ・円高(20%)米GDP改定値や耐久財受注が大幅に下方修正され、PCEが低下。ミシガン大学消費者信頼感が悪化しリセッション懸念が高まる。FOMCが10月に0.50%の利下げを示唆。日本の東京都区部CPIが上振れし10月利上げ観測が再燃。フランス格下げや中東緊張の長期化でリスクオフが強まる。145円を割り込み、144円台半ばまで下落。安全資産として円買いが先行する。

#まとめ

9月22日週のドル円は、FOMC後の利下げ路線が定着する中で米国経済指標の強弱に反応しやすく、145〜149円台での神経質な取引が予想される。米国ではPMI、住宅指標、GDP改定値、PCEデフレーターなど重要指標が続き、予想上振れなら米金利が反発しドル買い、下振れなら利下げ観測が強まり円買いが進む。日本では8月CPIの鈍化と総裁選による政治空白が円高要因となりやすいが、東京都区部CPIが上振れすれば日銀利上げ観測が再燃し円高がさらに強まる可能性がある。フランス格下げや中東情勢の緊張といった海外リスクも市場心理を左右するため、重要イベント前後はポジションを軽くし、テクニカル水準とファンダメンタルズの双方を確認しながら取引することが重要である。