2025-09-14 ドル円週報
2025年9月第2週のドル円を振り返り、FOMC直前の注目材料と戦略を整理。
米国では9月16–17日のFOMCを目前に控え、米小売売上高や住宅指標が強弱を探る展開となる。市場は9月会合で0.25%の利下げをほぼ織り込んでおり、労働市場の悪化とインフレの鈍化がドル安材料となる一方、パウエル議長のハト派/タカ派バランス発言に注目が集まる。日本では8月全国CPIの発表と20年債入札が予定され、石破首相辞任に伴う自民党総裁選が円買い要因として意識される。海外ではフランスの議会が首相を不信任で罷免するなど政局不安が続き、ユーロ安・円買い圧力をもたらしているmarctomarket.com。中東情勢ではイランとイスラエルの軍事衝突が続いており、米国の関与が高まればドル高・円安が進み得るreuters.com。総じて、ファンダメンタルズは上下双方のリスクを孕み、ボラティリティの拡大が見込まれる。
前回の結果(答え合わせ)
- 先週の想定レンジ・シナリオ:146.50〜149.50円。PPI/CPIの結果とFOMC前の思惑によって上下するレンジを想定した。
- 実際の値動き:オンライン為替情報では、9/07〜9/14の週にドル円は高値148.44円、安値146.355円、終値147.7円だったwise.com。
- 一致点/相違点:想定レンジ内で推移し、高値は149円台を試せなかったが、安値はわずかに146円台前半まで下振れ。終値は147円台後半と想定よりやや弱かった。
- 外れ要因の分析:米CPIが前年比+2.4%と予想を下回り、利下げ観測が強まったほか、石破首相辞任報道で円買いが進んだ。またフランス議会の首相不信任決議がユーロ安・円高材料となったmarctomarket.com。
米国要因
#FRB関連発言と市場の織り込み
- パウエル議長:ジャクソンホール(8/22)の講演で「労働市場の悪化リスクが高まりインフレは目標に接近しつつある」とし、政策金利を調整する余地を示唆したreuters.com。今週の会見でも慎重姿勢を維持する公算が大きい。
- ウォラー理事:8/28の講演で「9月会合で0.25%の利下げを支持し、3〜6か月かけて中立金利(約3%)に向けて段階的な利下げを進めるべきだ」と主張したreuters.com。市場はこの発言を受けて年内2回以上の利下げを織り込んでいる。
- クック理事:労働市場の底堅さから「利下げは慎重に進めるべき」と述べ、インフレは依然粘着的と指摘したreuters.com。
- 市場織り込み:米金利先物は9月の0.25%利下げ確率を90%程度、0.50%利下げ確率を10%前後と見込むreuters.com。複数の理事が早期利下げを支持する一方、パウエル議長やクック理事は慎重姿勢を崩しておらず、市場との温度差が残る。
#利下げ幅ごとの想定水準
利下げ幅 | FF金利目標 | ドル円水準感 |
---|---|---|
据え置き(0bp) | 5.25–5.50% | 148〜150円台(米金利高止まりで円売り優勢) |
▲0.25% | 5.00–5.25% | 146.5〜149円(押し目買いと戻り売りが交錯) |
▲0.50% | 4.75–5.00% | 145〜147.5円(利下げ加速で円高圧力) |
#今週の米主要経済指標とシナリオ
経済指標は小売売上高や住宅関連指標が中心。市場予想は総じて前月比+0.4%程度の増加で、前回より持ち直すと見込まれている。
日付 (JST) | 指標・イベント | 予想/注目点 | 強弱シナリオ |
---|---|---|---|
9/16(火) | 米NY連銀製造業指数 | 0付近(前回−6.5) | 予想を大きく下回れば景況感悪化→円買い。改善すれば円安圧力。 |
9/17(水) | 小売売上高(8月)marketsquawk.ai | 前月比+0.4%前後 | 上振れ:米景気堅調→利下げ観測後退で円安。下振れ:米景気減速→円買い。 |
9/17(水) | FOMC政策金利・ドットチャートmarketsquawk.ai | 0.25%利下げが濃厚 | 声明がタカ派ならドル買い・円売り、ハト派なら円買い。ドットで年内の追加利下げ回数を注視。 |
9/18(木) | 新規失業保険申請件数、住宅着工・建設許可marketsquawk.ai | 申請件数21万件台、着工120万戸前後 | 労働市場悪化なら円買い、住宅指標堅調なら円安。 |
9/19(金) | 既存住宅販売件数marketsquawk.ai | 年率400万戸前後 | 予想を下回ればリセッション懸念→円買い。 |
翌週以降に第2四半期GDP改定値(9/25)や個人消費支出(PCE)デフレーター(9/26)の発表が控え、利下げペースの再評価材料となるbea.govbea.gov。
日本要因
#インフレ・経済指標
- 全国CPI (8月):9月19日公表予定stat.go.jp。生鮮食品を除く前年比+2.7%前後が予想される。米よりも高いインフレ率を背景に円高圧力が残る。
- 東京都区部CPI (9月速報):9月26日公表予定stat.go.jp。基調的インフレの動向を測る指標で、上振れなら10月利上げ観測を後押し。
- 雇用統計:8月失業率・有効求人倍率は10月3日公表stat.go.jp。市場では失業率2.5%前後で横ばいを見込む。
- 国債入札:9月17日に20年債入札(発行額約8,000億円)mof.go.jp、9月18日に短期国債入札(約4,300億円)mof.go.jpが予定されており、長期金利の動向が注目される。
#日銀・要人発言
- 氷見野副総裁(9/2講演):消費者物価指数はコメ価格急騰で2%超だが基調的インフレは1.6%程度と指摘し、基調インフレの持続的上昇を確認するまで慎重に政策を進める姿勢を示したboj.or.jp。
- 中川審議委員(8/28講演):基調的CPIは一時減速後に労働需給の逼迫で再び2%へ向かうとし、7月会合で決定した政策金利0.5%と国債買い入れ漸減の方針を維持しつつ、見通しが実現すれば追加利上げに踏み切る考えを示したboj.or.jp。
- 市場では10月会合での0.25%利上げ織込み度合いが、石破首相辞任の影響などから20〜30%程度に低下しているreuters.com。
政治・地政学要因
- 国内政局:石破茂首相が9/9に辞任を表明し、9月下旬〜10月初旬に自民党総裁選が行われる予定。後継候補には積極財政派の高市早苗氏と改革派の小泉進次郎氏が挙がっており、円買い要因として意識されるreuters.comreuters.com。政治空白が続けば10月利上げは先送りされる可能性が高い。
- フランス政局:フランス議会は財政再建策を巡りベイルー首相を不信任で罷免し、新首相任命を迫られている。マクロン大統領は保守派と左派の間で新首相選出に苦慮しており、信用格付け会社フィッチがフランスの格付けをネガティブアウトルックで再評価する予定marctomarket.com。ユーロ安が円買いにつながりやすい。
- 中東情勢:イランとイスラエルの空爆が続き、米国の関与が議論されている。イラン外相は欧州との協議継続を表明したが、市場は米国の介入やエネルギー価格の高騰を警戒し、ドル高・円安が進む場面もあるreuters.com。
レンジと戦略
#想定レンジ
来週(9/16〜9/20)のドル円想定レンジは145.80〜149.80円。FOMCでの利下げと政治リスクが交錯し、広めのレンジを設定する。
#注目水準
- 上値目線:148.50円、149.00円、149.80円(150円手前は介入警戒ライン)。
- 下値目線:146.50円(前週安値付近)、146.00円(50日移動平均)、145.80円(介入警戒ライン)。
#エントリーポイント
- 押し目買い:146.00〜146.50円で買い、ストップロス145.50円、利食い目標148.50円。
- 戻り売り:148.80〜149.20円で売り、ストップロス150.30円、利食い目標146.80円。
- ポジション調整:FOMC直前はポジションを軽くし、会見内容確認後に短期的な順張り。9/19のCPI発表や日本の20年債入札前後では金利動向を見ながら建玉を調整。
シナリオ分岐
シナリオ | 条件 | 想定ドル円水準 |
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ベースシナリオ (50%) | FOMCが0.25%利下げを実施し、パウエル議長が慎重姿勢を維持。米小売売上高・住宅指標が市場予想並み。日銀は利上げ観測を抑え、日本CPIは予想通り。 | 146.80〜148.80円で推移。 |
上振れシナリオ・円安 (30%) | 米小売売上高が強く、FOMCで据え置きやタカ派姿勢が示される。中東情勢緊迫化によるドル買い。日本CPIが予想を下回り利上げ観測後退。 | 149.00円を上抜け150円台を試す。 |
下振れシナリオ・円高 (20%) | FOMCが0.50%の利下げまたは年内複数回利下げを示唆。米小売売上高や住宅指標が大幅に悪化し、リセッション懸念が高まる。日本CPIが上振れし10月利上げ観測が再燃。フランス政局や中東リスクによるリスク回避が強まる。 | 146円を割り込み、145円台中盤まで下落。 |
まとめ
来週のドル円はFOMCを中心とした米金融政策イベントと日本のCPI、政治リスクを睨みながら上下に揺れ動く見通しだ。市場は0.25%利下げを織り込む一方、パウエル議長の発言次第では利下げペースの再評価が起こり得る。また日本では首相辞任に伴う政治空白や20年債入札が円買い材料となるが、CPIが弱ければ利上げ観測が後退し円安に振れやすい。フランス政局や中東情勢といった海外リスクがユーロやドルの動向を左右し、ドル円にも波及するため、イベント前後のポジション調整と慎重なリスク管理が求められる。