2025-11-10 EURUSD週報
前週のEURUSD動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。米欧の政策スタンスと景気サイクルの差を踏まえた相場見通し。
#🪶 はじめに(市場のストーリー)
前週(11月10日〜11月14日)のEURUSDは、米政府機関の長期閉鎖で米国の主要統計が欠落し、手掛かり難の中で推移した。序盤は米長期金利の持ち直しとユーロ圏指標への懸念で1.155付近まで下押したが、ユーロ圏指標の底堅さと米消費者信頼感の急落が意識されるとドル売りが優勢となり、週後半にかけて1.16台を試す展開となった。中国の鉱工業生産や小売売上高の鈍化は世界的なリスクオフの一因となったものの、米独金利差の縮小がユーロの下支えとなった。結果的にEURUSDは週足で約+56pips(+0.48%)上昇し、米ドル指数(DXY)は週末に99.3近辺まで反落して週間で約-0.4%下落した。
#🧭 今週の総括
前週のレンジは1.1541〜1.1656、週終値は1.1621。米10年債利回りは4.11%で横ばいだった一方、ドイツ10年債利回りは2.67%から2.72%へ上昇してスプレッドは約5bp縮小した。DXYは99.71→99.28へ下落し、リスク資産の持ち直しとインフレ減速期待がドル売りにつながった。ナスダック総合は週間で+0.1%、S&P500も+0.1%にとどまり、投資家心理は不安定なままだった。
#✅ 当たった点(根拠数値付き)
- 米独金利差の縮小を想定:前週の週報が提示した「140〜150bpに収斂する」シナリオ通り、米独10年債スプレッドは147bp→約142bpへ縮小しユーロを下支えした。
- ユーロ圏指標改善への注目:ユーロ圏ZEW期待指数は22.7→25.0へ上昇し、投資家心理の持ち直しが確認された。これが欧州景気の底打ち期待を高め、ユーロ買い戻しを促した。
- 米消費者信頼感の急落:ミシガン大学信頼感指数が53.6→50.3へ低下し、長期インフレ期待も4.7%へ低下。週報で警戒していた政府閉鎖の影響がドル売りを誘発した。
#❌ 外れた点(根拠数値付き)
- 米インフレ指標欠落によるボラティリティ低下:米CPIやPPIが相場のモメンタムを左右すると予想していたが、政府閉鎖の影響で公表が延期され、当初想定より値動きは落ち着いた。
- ユーロ安シナリオが未達:米指標強含みや中国の弱さで1.15割れを想定していたものの、ユーロ圏指標の底堅さと金利差縮小で下値は限定的となり、週中の安値は1.1541止まりだった。
#📊 検証サマリー(価格・イベント・金利bp)
| 指標 / イベント | 前回 → 今回(予想) | トレンド評価 |
|---|---|---|
| ユーロ圏HICP総合(10月確報) | 2.2% → 2.1%(予想2.1%) | インフレ鈍化でユーロ売り圧力 |
| ユーロ圏コアHICP | 2.4% → 2.4%(予想2.4%) | 横ばいで中立 |
| ドイツ卸売物価指数(前年比) | 1.0% → 1.1% | 物価上昇圧力が緩やかに再加速 |
| ドイツZEW期待指数 | 22.7 → 25.0(予想23.5) | 期待感改善でユーロ買い |
| ドイツZEW現況指数 | -80.0 → -78.7(予想-77.5) | 低水準ながら改善幅は限定的 |
| イタリア鉱工業生産(前年比) | -3.0% → +1.5%(予想-0.5%) | 予想外の反発でユーロ支援 |
| ユーロ圏鉱工業生産(前月比) | -0.6% → +0.2%(予想0.3%) | 改善するも力強さは限定的 |
| ユーロ圏GDP第2速報(QoQ) | 0.1% → 0.2%(予想0.2%) | 小幅加速でユーロ支援 |
| ユーロ圏雇用者数(QoQ) | 0.3% → 0.1%(予想0.2%) | 就業増加が鈍化しユーロ売り材料 |
| 英GDP(Q3 QoQ) | 0.3% → 0.1% | 英景気鈍化でポンド売り・ユーロ買い圧力 |
| 米失業保険申請件数 | 228.9k → 227.5k(予想227k) | わずかに減少しドル買い要因 |
| 米ミシガン大信頼感 | 53.6 → 50.3(予想53.2) | 大幅悪化でドル売り |
| 中国鉱工業生産(前年比) | 6.5% → 4.9%(予想5.5%) | 鈍化でリスクオフ |
| 中国小売売上高(前年比) | 3.0% → 2.9%(予想3.1%) | 消費減速でリスクオフ |
| 米10年債利回り | 4.11% → 4.11% | 横ばいで中立 |
| 独10年債利回り | 2.67% → 2.72% | +5bpでユーロ支援 |
| 米独10年スプレッド | 147bp → 142bp | 5bp縮小でユーロ買い |
| DXY | 99.71 → 99.28 | 約-0.4%でドル安 |
#📅 今週の振り返り(実績)
| 日付 (JST) | 主なイベント・結果 | EURUSDの反応 |
|---|---|---|
| 11/11 (月) | ドイツZEW景況感:期待25.0、現況-78.7。米国債市場は祝日で休場。 | 指標改善を受け一時ユーロ買いも、現況の弱さと商い薄で1.155台横ばい。 |
| 11/12 (火) | ユーロ圏HICP確報2.1%、コア2.4%。イタリア鉱工業生産 +1.5%。 | インフレ鈍化で上値は抑えられたが、イタリア指標の強さで終値1.1582と小幅高。 |
| 11/13 (水) | 米失業保険申請22.75万件、中国小売2.9%、鉱工業4.9%。 | 中国データ鈍化で一時1.1563まで下落も、米データ弱含みで1.1593に戻す。 |
| 11/14 (木) | ユーロ圏GDP第2速報 +0.2%、雇用 +0.1%。ドイツ卸売物価 +1.1%。 | ユーロ圏成長が想定を上回り、ユーロ買いが加速して1.1656の週高値。終値1.1634。 |
| 11/15 (金) | 米ミシガン大信頼感 50.3。 | 米金利低下とドル安が続き、1.1607〜1.1654で推移して1.1621で週を終えた。 |
#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)
次週(11月17日〜11月21日)は、政府閉鎖の影響で米統計の発表予定が流動的だが、週半ばからは主要PMIやFOMC議事要旨が並ぶ。
| 日付 | 予定イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 11/18 (火) | ドイツZEW現況指数、ユーロ圏貿易収支 | 景況感がさらに改善すればユーロ買い材料。貿易黒字拡大なら経常収支の支援に。 |
| 11/19 (水) | FOMC議事要旨、米住宅着工・建設許可 | 議事要旨で利下げ議論が深まればドル売り。住宅市場の減速にも注目。 |
| 11/20 (木) | 独仏ユーロ圏PMI速報、米PMI速報、新規失業保険 | PMIが50超えなら欧州景気の底入れを確認。米PMIとの比較で金利差の行方を探る。 |
| 11/21 (金) | 英小売売上高、英CPI、ユーロ圏消費者信頼感、米中古住宅販売 | 英指標が弱ければポンド売り・ユーロ買いのクロスも。ユーロ圏消費者心理も注視。 |
#🧠 マーケットセンチメント分析
IMM通貨先物ではユーロは小幅な売り越しだが、政府閉鎖による指標欠落とリスクイベントの不透明感からポジションは軽い。中国経済の鈍化や地政学リスクが安全資産需要を高めつつも、ナスダックとS&P500は週間で小幅高となり、リスクオン・オフが交錯している。ユーロは金利差縮小と欧州景気の底打ち期待に支えられているものの、指標次第で流れが変わりやすい。
#📈 週後半に向けた変化兆候
- 金利スプレッド:米独10年債スプレッドが140bpを下回ればユーロ買いが加速、145bp超でドル買い戻しが入りやすい。
- 節目のレート:1.1670を明確に突破すれば上昇トレンド継続。逆に1.1570割れは下落基調再開を示唆。
- リスク資産の方向性:米株が堅調ならリスクオンでユーロ支援、再び調整が強まればドル高に警戒。
#🧮 週次比較行(先週比)
| 指標 | 今週 | 先週 | 差分 |
|---|---|---|---|
| 週レンジ (H-L) | 1.1541〜1.1656 | 1.1469〜1.1591 | 約115pips → 122pipsで拡大 |
| 週終値 (EURUSD) | 1.1621 | 1.1564 | +0.48%(ユーロ高) |
| 米独10年債スプレッド | 約142bp | 147bp | -5bp(縮小) |
| DXY | 99.28 | 99.71 | -0.43%(ドル安) |
#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)
- ユーロロング:欧州PMI改善とFOMC議事要旨のハト派サプライズを想定し、1.1580付近で押し目買い。目標1.1700、損切り1.1540割れ。
- レンジトレード:イベントまで方向感が出にくい場合は1.1570〜1.1670のボックスを意識し逆張り。要人発言や中国指標には注意。
- ユーロショート:米PMIや失業保険が強く米金利が再上昇した場合、1.1560割れで短期売り。ターゲット1.1470、損切り1.1630超え。
- リスク管理:米政府閉鎖に伴う統計遅延や地政学リスクで相場が急変する可能性があるため、ポジションサイズは控えめにしレバレッジ管理を徹底する。
#⚠️ リスク要因
- 米政府閉鎖の長期化:統計遅延が続けば市場の不確実性が高まり、ドルの安全通貨需要が急変するリスク。
- インフレ指標のサプライズ:米・ユーロ圏のCPIやPPIが予想と大きく乖離すれば金利が急変動し、ポジションに影響。
- 中国経済指標の弱さ:中国の工業生産や小売が予想を下振れするとリスクオフが進みユーロに下押し圧力。
- 地政学リスク:中東や欧州周辺の緊張が高まるとエネルギー価格が急騰し、欧州景気悪化を通じてユーロ売り要因となる。
#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)
- 金利差と景気指標の相互作用が方向性を左右:米独スプレッドの縮小とユーロ圏指標の底堅さがユーロを支援し、DXYは低下した。金利差が相場の重石となる一方、景況感の変化で方向性が素早く転換する点を再確認した。
- データ欠落はボラティリティを抑えるが反動に注意:米政府閉鎖で主要統計が発表されず、市場は小動きだった。発表再開時には大きな反応が出る可能性が高く、ポジション管理が重要。
#🔗 参照URL
- 2025-11-10 EURUSD週報(SamuraiQuant)
- Eurozone ZEW Survey
- Eurozone Inflation Update
- Italy Industrial Production Data
- Eurozone Industrial Production Data
- Euro Area GDP Growth
- Eurostat Employment Statistics
- Destatis Wholesale Price Index
- US Weekly Jobless Claims (Reuters)
- University of Michigan Consumer Sentiment
- China Industrial Production & Retail Sales
- US 10-Year Treasury Yield (FRED)
- Germany 10-Year Bund Yield
- US Dollar Index Overview
- S&P 500 Snapshot (Advisor Perspectives)