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2025-11-10 ゴールド週報(XAUUSD)

2025-11-10 · fx
最終更新: 2025-11-10
GoldXAUUSDWeekly

前週の金価格動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。実質金利とドル指数、地政学・リスク資産連動を踏まえた相場見通し。

#🪶 はじめに(市場のストーリー)

政府閉鎖が解除されたばかりの米国では主要経済指標が相次いで延期され、市場参加者はデータ欠如の暗闇の中で手探りの状態が続いた。この空白を埋めたのが米国債入札や中央銀行関係者の発言であり、金利やドル指数が大きく揺れ動くたびに金相場も巻き込まれた。海外では中国や欧州から物価指標やGDP改定値が公表され、世界経済の減速観測が強まりつつも、ETFへの資金流入は継続。こうした混沌のなかでXAUUSDは週前半に安全資産需要から急伸し、週末はタカ派的な当局者発言と金利上昇を嫌気して押し戻された。

#🧭 今週の総括

対象週(11月10日〜11月14日)は週初にリスクオフで金が急伸し、週中には米10年債入札の需給を材料に上値を伸ばしたが、週末にかけてFRB高官のタカ派発言と長期金利上昇、ドル指数の反発が重なり反落した。週終値は4,087.96ドル/oz(前週比 +1.9%)で、週間レンジは約233.6ドル/ozに拡大した。

  • 週間始値 4,012.04 → 終値 4,087.96(+1.9%)。週中に4,191ドルまで上昇後、週末は4,090ドル台へ反落。
  • 米10年名目利回りは4.10% → 4.15%へ上昇。11月12日の10年債入札は最高利回り4.074%、Bid-to-Cover 2.43倍とやや弱めの結果だった。
  • 米10年実質利回り(TIPS)は1.84% → 1.82%へ小幅低下。ドル指数(DXY)は週中に一時99割れも、週末は99.27へ反発。
  • 株価指数はダウ +0.34%、S&P500 +0.08%、ナスダック -0.45%とまちまち。WTI原油は59.95ドル/bblで週末にかけ2.2%上昇、ビットコインは94,300ドルと年初来安値圏まで下落。

#✅ 当たった点(根拠数値付き)

  • インフレ指標再開への注目:前週週報で「CPI・PPI再開の有無が金相場の鍵」とした通り、政府閉鎖余波で10月米CPI/PPIが発表されず、市場は指標空白に翻弄された。
  • 10年債入札の需給が金利を動かす:11月12日の10年債入札で需要が鈍化し、米10年利回りが4.11%→4.15%へ上昇。金の上値を抑える要因になった。
  • タカ派発言が金を押し下げる可能性:FRB高官が12月利下げをけん制する発言を行い、金は週末に約3%急落。週報の下落シナリオが実際に発生した。

#❌ 外れた点(根拠数値付き)

  • 週末反発期待:CPI鈍化から4,100ドル突破を狙う上昇シナリオを描いたが、指標が発表されずタカ派発言が優勢となり、週末は下落で終わった。
  • 実質金利低下の継続:1.7%台への低下を想定したが、10年TIPS利回りは1.82%前後で底打ち感が強く、上値を圧迫した。

#📊 検証サマリー

指標・資産前週 → 今週影響
XAUUSD週終値4,004.18 → 4,087.96+1.9%、週前半の急伸が寄与。
米10年名目利回り4.10% → 4.15%+5bp、入札弱含みで金に逆風。
米10年実質利回り1.80% → 1.82%+2bp、実質金利の底打ちが上値抑制。
DXY99.60 → 99.27-0.33pt、週末に反発も全体では軟調。
米10年債入札高利回り4.074%、Bid-to-Cover 2.43倍需給緩みで金利上昇。
中国CPI/PPI0.0%→0.2%、-2.3%→-2.1%デフレ懸念後退も金への影響は限定的。
株価指数ダウ+0.34%、S&P+0.08%、ナスダック-0.45%ハイテク中心に弱く、安全資産需要が一時増加。
WTI原油59.75 → 59.95+0.2%、インフレ懸念を残す。
ビットコイン約96,000 → 94,300暗号資産売りと連動し金が買われる場面も。

#📅 今週の振り返り(実績)

日付 (JST)主要イベント・結果XAUUSDの反応
11/10 (月)中国CPI +0.2%、PPI -2.1%。米国データは欠如が継続。安全資産需要と中国データ改善期待から4,012→4,120ドルへ急伸。
11/11 (火)米ベテランズデーで債券市場休場。流動性低下で高値揉み合い、4,142ドル付近で小動き。
11/12 (水)米10年債入札:高利回り4.074%、Bid-to-Cover 2.43倍。入札後に金利が4.15%まで上昇し、金は伸び悩み4,191ドルで引け。
11/13 (木)政府閉鎖余波でCPI/PPIなどの統計が未発表。材料欠如でポジション調整が入り、4,184ドルへ小幅安。
11/14 (金)FRB高官が利下げに慎重姿勢を示し、12月利下げ確率が低下。タカ派発言と金利上昇で一時3%急落し、4,088ドルで週を終えた。

#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)

次週(11月17日〜11月21日)は政府閉鎖解除後の統計再開が焦点。公表日程は流動的だが、以下のイベントが予定されている。

日付イベント注目点
11/17 (月)米9月雇用統計(延期分)、NY連銀製造業指数失業率と賃金の再評価。サプライズ発表に備えたい。
11/18 (火)米20年債入札、欧州ZEW景況感長期債需給が再び金利を押し上げるか、欧州景況感が悪化するかに注目。
11/19 (水)未定 10月CPI/PPI再発表の可能性、FOMC議事録インフレ鈍化なら利下げ期待が高まり金支援。議事録でバランスシートや利下げ時期を探る。
11/20 (木)米失業保険申請件数、住宅着工・建設許可労働市場や住宅市場の粘り強さが金利に影響。
11/21 (金)米景気先行指数、パウエル議長講演指数の減速やハト派発言なら金は上値トライ。逆にタカ派姿勢なら調整。

突然の統計発表や日程変更が起こり得るため、イベント前後はポジションを軽くし、流動性低下やスプレッド拡大に注意が必要だ。

#🧠 マーケットセンチメント分析

  • CFTCポジション:政府閉鎖でCOTレポートが公表停止中のため最新ポジションは不明。直前週まで非商業ネットロングは減少傾向との観測がある。
  • ETFフロー:SPDRゴールドシェアなど主要ETFへの年初来資金流入額は米国で約350億ドル、世界全体で640億ドルと過去最高水準。高値圏でも現物需要が下支えしている。
  • CTA/ヘッジファンド:週足では上昇トレンドが続くが、日足では移動平均との乖離が拡大し、CTAは買いポジションを一部削減。週末の急落で中立寄りに戻ったとの見方が多い。
  • リスクオン/オフ:株式市場は当局者発言に敏感で、特にハイテク中心の売りでリスクオフが強まる場面では金に資金が向かいやすい。ただし換金売りが重なると金も同時に売られる例があり、流動性リスクに注意。

#📈 週後半に向けた変化兆候

  1. 実質金利の底打ち:米10年TIPS利回りが1.8%台で再び上昇すると調整局面入りのシグナル。1.7%台へ低下すれば上値トライが視野。
  2. ドル指数の方向性:DXYが100を回復すれば金に調整圧力、99を割り込めばドル安で金上昇余地。
  3. 株式市場の動き:S&P500が主要移動平均を割り込むと安全資産需要で金買い。逆に株高が戻れば金の上値は限定的。

#🧮 週次比較行(先週比)

項目先週(11/03〜11/07)今週(11/10〜11/14)差分
週レンジ (XAUUSD)約101ドル約233.6ドル+132.6ドル(ボラティリティ拡大)
週終値 (XAUUSD)4,004.18ドル4,087.96ドル+83.78ドル (+2.1%)
米10年実質利回り1.80%1.82%+0.02pt(実質金利上昇)
DXY99.6099.27-0.33pt(ドル弱含み)

#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)

  • 上昇シナリオ:10月CPI/PPIが予想を下回り名目・実質金利が低下する場合、4,100ドル台への再挑戦。押し目は4,050ドル前後、損切り3,980ドル、目標4,120ドル付近。
  • 基準シナリオ:インフレ指標が未公表または予想通りで推移するなら3,980〜4,080ドルのボックス圏で回転。ボラティリティ拡大に備えてポジションは小さめ。
  • 下落シナリオ:インフレ指標が強くFRBがタカ派姿勢を強めれば、名目・実質金利上昇で3,950ドル割れも。4,000ドル台で戻り売り、損切り4,070ドル、目標3,900〜3,850ドル。

#⚠️ リスク要因

  • 経済指標発表の遅延・変更:政府閉鎖によるデータ収集遅延でCPIや雇用統計の発表が突然変更されるリスクが残る。サプライズ発表時は流動性不足に注意。
  • 地政学リスク:中東やウクライナ情勢が再燃すれば原油価格や安全資産需要を通じて金が急変動する。
  • 再度の政府閉鎖・財政問題:暫定予算は短期合意にとどまり、再閉鎖のリスクが残る。歳出協議の難航が米国債格付け懸念を誘えば金は乱高下する。

#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)

実質金利とドル指数が金相場の一次ドライバーであることを再確認した。指標空白の中でも入札結果や当局者発言が長期金利を動かし、それが金価格に直結する。データ遅延が続く間は流動性が低下しやすく、過度なポジションを避けつつ突発ニュースへの備えを徹底したい。

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