2025-10-06 ドル円週報
前週のドル円動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。政府閉鎖による米経済統計の延期や日本の新政権誕生を踏まえた相場見通し。
#概要
前週(10/6〜10/12)のドル円は日本の政局と米政局の不確実性に翻弄された。
10月4日の自民党総裁選で財政拡張派の高市早苗氏が勝利し、“高市トレード”と呼ばれる円売りが加速して週初に151円台から153円超まで急伸した。
元財務官の竹内篤氏は「米利下げと日銀の利上げが進めば円安は一服するものの、160円近辺では介入が実施される可能性が高い」と指摘(Reuters)。
しかし、与党内連立交渉の難航、トランプ大統領による対中関税100%表明などがリスクオフ要因となり、週末には152円前後まで反落した。
米国では政府閉鎖が10月1日から続き、雇用統計・CPI等が延期される中で手掛かり材料に乏しく、米金利は小動き。
さらにフランス首相辞任や欧州政治不安も安全資産としての円買いを誘った。
今週(10/13〜10/17)は政治リスクと限定的な米経済データが相場を左右する。
米政府閉鎖の行方、NY連銀製造業指数や消費者信頼感などの民間統計が注目。
日本では卸売物価指数(CGPI)や消費者物価の先行指標が発表予定。
前週+2.7%のCGPIは、円安が続けば輸入コスト上昇懸念が再燃しやすい。
高市新政権による補正予算・新内閣人事、日銀の利上げ観測の動向も円相場の焦点となる。
#前回の結果(答え合わせ)
- 前週の想定レンジ:150.00〜153.50円
- 実際の値動き:高市氏勝利と利上げ先送り観測を背景に153.27円まで上昇後、米中摩擦懸念と政局不透明化で151〜152円台前半に反落。
- 一致点/相違点:一時レンジ上抜けも、週末は想定内へ収束。153円前後が当局警戒ライン。
- 主な要因:
- 政治要因:高市政権の財政拡張期待→円安。
- 米要因:政府閉鎖による統計欠落→材料難。
- 外部リスク:対中関税・欧州政局→円買い要因。
- 介入警戒:153円突破で警戒強化。
#米国要因
#政策スタンスと経済指標
- FRB:9月FOMC議事要旨では「追加利下げを支持する意見」が優勢。市場は10月28–29日会合での0.25%利下げを7割織り込み。
- 政府閉鎖の影響:
- 10月1日以降、BLS・BEAの公的統計(雇用・小売・CPI・PPIなど)が停止。
- CPIは10月24日へ延期(Reuters)。
- 今週はNY連銀指数・消費者信頼感・住宅指標など民間調査が代替材料。
- ミシガン大学消費者信頼感:55.0(前回55.1)と横ばい。
「高価格と雇用不安が支出抑制要因」と指摘され、景気減速懸念を裏付け。
#今週の主な米指標(政府閉鎖下で実施)
| 日付 (JST) | 指標・イベント | 発表源 | 注目点 | 影響 |
|---|---|---|---|---|
| 10/14 | NFIB中小企業楽観指数 | NFIB | 景況感の底打ち | ↑→円安/↓→円高 |
| 10/14 | Redbook週間売上 | Redbook | 週次動向確認 | ↑→円安 |
| 10/15 | NY連銀製造業景況指数 | NY連銀 | 先週10.7と予想上振れ | ↑→円安/↓→円高 |
| 10/16 | フィラデルフィア連銀指数 | Philly Fed | 製造業先行指標 | ↑→円安/↓→円高 |
| 10/16 | NAHB住宅市場指数 | NAHB | 住宅センチメント | 改善→円安 |
| 10/17 | 企業決算・FRB発言 | 各社 | 景況感と金利観測 | タカ派→円安/ハト派→円高 |
※ 雇用保険・小売・CPI・PPI等は延期中。
#日本要因
#経済指標・政策
- 卸売物価(CGPI):9月 +2.7%(市場予想+2.5%)。
輸入物価は▲0.8%(前月▲3.9%)で下げ止まり。円安進行なら輸入インフレ再燃懸念。
家計調査では88%の家庭が「物価上昇が続く」と回答(Reuters)。 - BOJのスタンス:
「賃金・物価の持続的上昇を確認するまで緩和維持」方針を維持。
10月会合での利上げ観測は後退。 - 消費者信頼感:9月 35.3(前回34.9)。マインド底入れ。
- 企業マインド:Reuters Tankanで製造業DI +13(3年ぶり高水準)、非製造業+27と堅調。
- 政治動向:高市氏勝利後、連立協議難航。追加経済対策と日銀への影響が焦点。
- 介入観測:竹内元財務官「160円方向なら介入の可能性大」。
#政治・地政学要因
- 米政府閉鎖:2週目に突入。公共サービス停止続く。長期化なら景気減速懸念拡大。
- 米中摩擦:トランプ氏の対中100%関税宣言、中国の報復示唆。→株安・円買い。
- 欧州政治:仏首相辞任、伊財政不安→ユーロ安→円高要因。
- 中東情勢:イラン核協議停滞、イスラエル周辺緊張→リスク回避円買い。
#レンジと戦略
#想定レンジ
149.50〜153.80円高市政権への期待と米政府閉鎖の綱引き。150円台前半中心の神経質展開。
150円割れでは輸入勢の買い、153円台では介入・利食い圧力。160円方向では極めて高い警戒。
#注目水準
| タイプ | 水準 | 解説 |
|---|---|---|
| 上値 | 153.50円 | “高市トレード”高値圏。超えると154円台。 |
| 上値 | 153.80円 | RSI過熱域、戻り売り圧力。 |
| 上値 | 160.00円 | 元財務官が介入ラインと指摘。 |
| 下値 | 151.00円 | 心理的節目。押し目買い入りやすい。 |
| 下値 | 150.00円 | 政府・日銀の警戒ライン。 |
| 下値 | 149.50円 | 先週安値。割れで148円台半ば視野。 |
#トレード戦略
- 押し目買い:150.00〜150.50円分割買い/SL 149.00円/TP 153.00円。
- 戻り売り:153.30〜153.80円売り/SL 154.50円/TP 151.50円。
- イベント前:指標発表直前は軽ポジ維持、結果で追随。
#シナリオ分岐
| シナリオ | 条件 | 想定レンジ |
|---|---|---|
| ベース(50%) | 政府閉鎖継続・民間統計堅調・財政期待 | 150.50〜153.00円 |
| 上振れ・円安(30%) | 政府閉鎖早期解消+補正大型+BOJ利上げ見送り | 153.00〜154.50円 |
| 下振れ・円高(20%) | 政府閉鎖長期化+米中摩擦激化+日本指標強め | 149.50〜151.50円 |
#まとめ
10月13日週のドル円は、高市政権による財政期待と米政府閉鎖・貿易摩擦リスクの綱引きでボラティリティが高止まり。
公式統計が止まる中、NY連銀指数や企業決算が市場の指針。
ミシガン大調査では消費者心理の慎重化が確認され、FRBは10月末会合で追加利下げ検討。
日本では物価高定着と新政権の政策発表が注目。
想定レンジ149.50〜153.80円内で、押し目買いと戻り売りの両立戦略が妥当。