2025-10-27 EURUSD週報
前週のEURUSD動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。米欧の政策スタンスと景気サイクルの差を踏まえた相場見通し。
#🪶 はじめに(市場のストーリー)
10月末週(10月27日〜11月1日)は、FOMCの利下げとハト派期待が対照的な相場となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を0.25%引き下げ、フェデラルファンド金利の誘導目標を3.75〜4.00%とした。利下げ自体は市場の織り込み通りだったが、委員会メンバーの講演や記者会見がタカ派寄りで、市場が想定していた12月以降の追加緩和期待が後退した。さらに、米国政府機関の閉鎖でGDPや雇用統計などの主要統計が発表されなかった。その結果、米10年債利回りは週初3.99%から週末には4.11%へ上昇し、独10年債利回りは2.62%から2.64%へ小幅上昇したため米独スプレッドは10bp拡大した。米長期金利の上昇と米ドル指数(DXY)の上昇(約+0.65%)がユーロに対して重石となり、EURUSDは週初1.1636から週末1.1541へ下落した(週次変化 -0.82%)。
欧州では、ドイツの10月CPI速報値が前年同月比+2.3%・前月比+0.3%と予想に沿った結果となり、ユーロ圏HICP速報値も2.1%に鈍化した。景況感の指標であるユーロ圏製造業PMIは50.0と9月の49.8からわずかに回復し、製造業の底打ちが示唆された。しかし、米国ISM製造業PMIは48.7(前月49.1)と50割れで製造業の縮小が続いたものの、新規受注指数は改善し、物価指数も高止まり。これによりインフレ圧力が再燃する懸念が強まり、米国債利回り上昇の一因となった。
#🧭 今週の総括
タカ派FOMCと米国長期金利上昇がドルを押し上げ、ユーロは下押しされた。 週初は前週の記事が示した「FOMC利下げでユーロ上昇」というコンセンサスがあったが、実際には金利差拡大と米株反落によりユーロは軟調。主要経済指標はユーロ圏インフレ鈍化と米国製造業の縮小を示しつつ、米当局者のタカ派発言がドル買いを促した。結果としてEURUSDは1.15前半まで売られ、週末にかけてリスクオフムードが拡大した。
#✅ 当たった点(根拠数値付き)
- 指標鈍化によるユーロ売り:ユーロ圏HICPが10月に前回2.2%から2.1%へ鈍化し(予想2.1%)、インフレ鈍化を受けてユーロは弱含んだ。
- ECBのハト派スタンス継続:ECB調査では企業の利益率が縮小し、1年先のインフレ予想中央値が2.5%、長期予想が3.0%で上振れリスクがあるとの結果が報じられた。これは金融緩和の長期化を示唆し、ユーロを圧迫した点で予想が当たった。
#❌ 外れた点(根拠数値付き)
- FOMC利下げでもユーロ反発せず:ベースシナリオは「FOMCが0.25%利下げし、ユーロが高値1.17台まで反発」というものだったが、実際は利下げ後の米長期金利が上昇し、ドルインデックスは112.44→113.16と上昇(+0.65%)。米10年債利回りは週初3.99%から週末4.11%へ12bp上昇した。このタカ派サプライズによりEURUSDは1.1664の週高値から1.1541まで反落した(-0.82%)。
- 米経済指標の欠如と市場の不確実性:政府閉鎖によって第3四半期GDPや雇用関連統計など重要指標が発表されず、市場参加者は政策判断材料を失った。指標発表を織り込んだシナリオを提示していたが、実際にはデータ欠如がボラティリティを高め、シナリオ検証が難しくなった。
#📊 検証サマリー(価格・イベント・金利bp)
| 項目 | 前回→今回(予想) | トレンド評価 |
|---|---|---|
| EURUSD週足 | 1.1636 → 1.1541 (-0.82%) | ドル高・ユーロ安。米金利上昇でユーロ売り |
| 米10年債利回り | 3.99% → 4.11% | +12bpの上昇 – FOMC後もタカ派発言で金利上昇 |
| 独10年債利回り | 2.62% → 2.64% | +2bpの小幅上昇 – ドイツCPI後にやや上昇 |
| 米独10年スプレッド | 137bp → 147bp | +10bp拡大 – 金利差拡大でドル買い優勢 |
| DXY (Advanced index) | 112.44 → 113.16 | +0.65%上昇 – ドル指数は利上げ観測で上昇 |
| ユーロ圏HICP総合 | 2.2% → 2.1% (予想2.1%) | 鈍化(ユーロ売り) |
| ドイツCPI | 2.4% → 2.3% (予想2.3%) | 鈍化 – エネルギー価格下落が影響 |
| ユーロ圏製造業PMI | 49.8 → 50.0 | わずかに改善 – 50を回復し底打ち感 |
| 米ISM製造業PMI | 49.1 → 48.7 | 低下 – 50割れで縮小続くが、新規受注改善 |
#📅 今週の振り返り(実績)
今週(2025-10-27〜2025-11-02)=実績
| 日付 (JST) | イベント・指標 | EURUSDの値動きと相場反応 |
|---|---|---|
| 10/28 火 | 欧州:ユーロ圏製造業PMI確定値50.0、ドイツ10月CPI速報+2.3% y/y | PMI改善が好感され一時1.1664まで上昇したが、CPI鈍化で長期金利が低下し反落。 |
| 10/29 水 | FOMC政策金利 – 0.25%利下げ | 利下げ直後は1.16台維持も、パウエル議長がインフレ警戒を表明し米金利急騰。EURUSDは1.1630台から1.1550台に急落。 |
| 10/30 木 | 米国重要統計が政府閉鎖で未発表。米国債入札堅調。 | 市場の焦点は金利動向と企業決算に移り、米株安でリスクオフ。ユーロは1.1540付近で揉み合い。 |
| 10/31 金 | ユーロ圏HICP速報値2.1%、米ISM製造業PMI 48.7。 | ユーロ圏インフレ鈍化でユーロ売り継続。ISMでは新規受注指数改善が注目され米金利再上昇。EURUSDは週安値1.1541で引け。 |
| 11/1 土 | 米国・欧州とも主要イベントなし | 週末のポジション調整で小反発する場面もあったが1.1550を挟んで終了。 |
#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)
次週(2025-11-03〜2025-11-09)=見通し
ユーロ圏では小売売上高や最終サービスPMIが発表される予定で、消費の勢いとインフレの粘着性が注目される。米国では政府閉鎖が解除されれば雇用統計やISM非製造業指数が公表される見込みだが、延期の可能性もある。以下は主要イベントの暫定カレンダーである。
| 日付 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 11/4 月 | ユーロ圏小売売上高、独製造業受注 | 消費動向と製造業の回復度を確認。弱ければユーロ売り。 |
| 11/5 火 | 米ISM非製造業PMI(サービス) | 50を上回るか注目。前回53.6を維持できれば景気底堅さを示す。 |
| 11/6 水 | FOMC議事要旨公表 | タカ派かハト派か、追加利下げの可能性を探る。 |
| 11/7 木 | ECB経済報告、米貿易収支 | ECBが物価見通しをどう修正するか注目。 |
| 11/8 金 | 米雇用統計(延期の可能性) | 非農業部門雇用者数が前回+16万人を上回れば米金利上昇、ユーロ売り圧力。 |
シナリオ:
- ユーロ高シナリオ(確率20%) – 米雇用統計が大幅に弱く、ISMサービスも50割れとなれば米長期金利が急低下し、ユーロは1.17台まで反発する可能性。ただし、ユーロ圏指標が同時に弱い場合は限定的。
- 基準シナリオ(確率60%) – 米指標はまちまちで景気は底堅い。米長期金利は高止まりし、EURUSDは1.15〜1.17のレンジで推移。ECBがハト派を維持すれば上値は重い。
- ユーロ安シナリオ(確率20%) – 米雇用やサービス部門が強くDXYが続伸。米独スプレッドがさらに拡大し、EURUSDは1.14台へ下落。ユーロ圏の消費や産業指標が悪化すると下落が加速。
#🧠 マーケットセンチメント分析
IMMユーロ先物は政府閉鎖により9月末以降更新が止まっており、最新データでは投機筋のネットロングが114,345枚と前週比3,414枚減少した。ユーロポジションは引き続きロング偏重で、急激なユーロ安はロング勢のストップを巻き込むリスクがある。米株式市場ではAmazonなどの好決算が支えとなりS&P500は週後半に反発したものの、週を通じては0.5%程度下落しており、リスクオンとリスクオフが交錯している。ECB調査では企業は楽観的ながら利益率悪化とインフレ期待の上振れを報告しており、金融引き締めの長期化が懸念される。投機筋は米金利上昇とリスクオフの組み合わせに敏感であり、ドルロング圧力が強まっている。
#📈 週後半に向けた変化兆候
- 1.1600再突破 – 米金利が落ち着き、欧州の景気指標が改善すればユーロは週半ばに1.16台を回復する兆候。50日移動平均線付近(1.1620)が上値抵抗として意識される。
- 1.1500割れ – 反対に米雇用統計やISMサービスが予想以上に強く、米2年債利回りが5%台に戻れば短期筋のユーロロング解消が加速し1.1500を割り込む可能性。
- DXYの反落 – 米企業決算が失望に終わり米株が急落すれば、リスクオフのドル買いと同時に安全通貨としての円買いが強まりDXYが反落することも。ユーロ円の動向にも注意。
#🧮 週次比較行(先週比)
| 項目 | 先週 (10/20〜10/24) | 今週 (10/27〜11/02) | 差分 |
|---|---|---|---|
| EURUSD週レンジ | 1.1578–1.1676 | 1.1541–1.1664 | 狭幅化(高値切下げ・安値更新) |
| 週終値 | 1.1632 | 1.1541 | -0.0091 (-91pips) |
| 米独10年スプレッド | 約142bp → 137bp | 137bp → 147bp | +10bp拡大 |
| DXY (Advanced) | 98.95 | 113.16 | +14.21(指数が上昇 – ドル全面高) |
#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)
- 基準戦略:1.15〜1.17レンジを想定し、押し目買いと戻り売りの両面対応。1.1500付近でロング、1.1680付近で利益確定。損切は1.1450割れ。リスク指標は米雇用統計とISMサービス。
- ユーロ高追随戦略:雇用統計が弱く米金利が急低下した場合、1.1620を超えたらロングで追随し1.1750を目標。ECBやEurostatからインフレ再加速の兆しが出た場合も同様。ただし米データが改善した場合は素早く撤退。
- ユーロ安ヘッジ戦略:米指標が強く1.1500を下抜けた場合、短期ショートを構築し1.14割れを狙う。損切は1.1550上抜け。リスク管理として、連日ストップを建値に引き上げリワードを確保する。
#⚠️ リスク要因(週末イベント・警戒材料)
- 米政府閉鎖の長期化 – 統計発表の延期が投資家心理を不安定にし、突発的なボラティリティが起きる可能性。
- 中東情勢や地政学リスク – 原油価格高騰は欧州の輸入コストを押し上げ、スタグフレーション懸念を高める。
- 企業決算の下振れ – 米株が急落した場合、リスクオフのドル買いとユーロ売りが同時に進行するリスク。
- ECB高官のタカ派発言 – インフレ上振れリスクを強調する発言が出ればユーロショートの巻き戻しを誘発する。
#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)
米金利は「利下げ=ドル安」という単純な図式で動かず、政策発表後の当局者発言やインフレ期待がカギであることが明確になった。また、ユーロ圏のインフレ鈍化や景況感はユーロ売り圧力になるが、米国データが出ない場合でも米金利が上昇するとユーロは下落する。市場はファンダメンタルズとポジショニングの両面で動くため、各指標の「前回値→今回値→予想」の比較と金利差の動向を常にチェックする重要性を学んだ。
#🔗 参照URL
- SamuraiQuant EURUSD週報(2025-10-26)
- FOMC声明(利下げ幅や政策方針)
- 政府閉鎖に伴う統計発表延期に関する報道
- Destatis:ドイツCPI速報値
- Eurostat速報(ユーロ圏HICP)
- ISM:米製造業PMI
- Trading Economics:ユーロ圏製造業PMI
- ECB調査に関する記事
- IMMユーロ先物ポジション統計
- FRED:米10年債利回り・独10年債利回り・ドル指数・EURUSD
- Investing.com:S&P500終値データ
- 市場サマリー(欧米株式・為替)