2025-10-27 ゴールド週報(XAUUSD)
前週の金価格動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。実質金利とドル指数、地政学・リスク資産連動を踏まえた相場見通し。
#🪶 はじめに – 市場のストーリー
米国政府機関の閉鎖が続き、公的統計が軒並み停止する中、10月末の金市場は情報の空白を抱えながらも相場が進んだ。実質金利は1.71%から1.81%へ10bp上昇し、ドル指数(DXY)は98.95から99.80と1ポイント近く上昇。名目金利も4.02%から4.11%に9bp上昇した。こうした「ドル高+金利上昇」の環境に加え、米株指数が週次で上昇(S&P500 +0.7%、NASDAQ +2.2%、ダウ +0.8%)しリスク資産が堅調となったことで、安全資産である金への需要は後退した。週末のXAUUSD終値は4,002.28ドル/ozで前週比-2.67%と軟化し、週レンジは3,886.49〜4,109.33ドルとボラティリティが縮小した。未公表データが多い中で市場の焦点はFOMCの25bp利下げと要人発言に集中し、金融政策が金利やドルに与える影響が改めて意識された週となった。
#🧭 今週の総括
前週のSamuraiQuant週報は「FOMCでの25bp利下げが予想されるが、声明がタカ派なら上値を抑え、GDP・PCEが強ければドル高で逆風」と指摘していた。実際には、FOMCは市場予想通り政策金利を3.75〜4.00%へ25bp引き下げ、バランスシート縮小を12月1日に終了すると発表した。しかし声明は物価の高止まりを警戒する内容で、10年実質金利が上昇しドル指数も強含んだため、金は週を通じて下落基調となった。また政府閉鎖の影響で予定されていた米Q3 GDPや9月PCE、雇用統計などが発表延期となり、相場は推測に頼る展開となった。株式市場や原油は堅調で、金への資金流入が一服し調整が進んだ。
#✅ 当たった点(根拠数値付き)
- 利下げ後のドル高と金反落:週報では「FOMC利下げがあっても声明がタカ派なら上値抑制」と警戒していた。実際、FOMCは25bp利下げを行ったものの、声明でインフレ再燃リスクを強調したことで10年実質利回りが+10bp上昇し、ドル指数も約+0.85ポイント上昇。金は週次で-2.67%下落し、上値抑制シナリオが的中した。
- 過熱修正警戒:前週の記事は金価格の過熱と資金流入の反動による調整を指摘していた。今週の金相場は週初から戻り売りに押され、10月27日に4,065ドルで始まった後、28日に週安値3,886ドルを付け、週末も4,002ドルで終えた。過熱修正が現実となった。
#❌ 外れた点(根拠数値付き)
- GDP・PCEへの期待:週報は「GDPが強ければドル高・金逆風、弱ければ下押し後の買い」と二段構えを想定した。しかし政府閉鎖でGDP・PCEが発表されなかったため、市場はデータに基づく売買ができず、金の反発余地は限定的だった。結果的にこのシナリオは検証不能となった。
- WTIの影響:前週は原油が+6.9%上昇してインフレ懸念を再燃させ金に下押しとされたが、今週のWTIは週次-0.85%(61.50→60.98ドル/バレル)と小幅下落で、インフレ警戒は一服した。原油上昇による金の下押しシナリオは当てはまらなかった。
#📊 検証サマリー(価格・イベント・金利bp)
| 項目 | 数値/結果 | コメント |
|---|---|---|
| XAUUSD週次OHLC | Open 4,065.35 / High 4,109.33 / Low 3,886.49 / Close 4,002.28 | 週次騰落率 -2.67%(前週終値4,112.10→4,002.28)、値幅 222.84ドル/oz。 |
| 米10年利回り | 4.02% → 4.11% | 名目利回り +9bp上昇。QT終了発表でもインフレ警戒が強く、長期金利は高止まり。 |
| 米10年実質利回り(TIPS) | 1.71% → 1.81% | 実質利回り +10bp上昇し、金の機会コストが上昇。 |
| DXY | 98.95 → 99.80 | ドル指数 +0.85pt (+0.86%)上昇。利下げにもかかわらず米国が相対的に高金利でドルが買われた。 |
| リスク資産指数 | S&P500 +0.7%, NASDAQ +2.2%, ダウ +0.8% | 株高・リスクオンが続き、安全資産金の需要を抑制。 |
| WTI原油 | Open 61.82 / High 62.17 / Low 59.76 / Close 60.98 | 週次 -0.85%下落。エネルギー価格の落ち着きでインフレ懸念は限定的。 |
| 主要経済指標 | GDP・PCE・雇用統計は政府閉鎖で未発表 | 発表延期のため市場は推測取引。ADPの民間雇用は-3.2万人、失業保険申請は22.4万件の推計。 |
#📅 今週の振り返り(実績)
今週(2025-10-27〜2025-10-31)=実績
| 日付 (JST) | 主要イベント/結果 | 金相場・市況(終値ベース) |
|---|---|---|
| 10/27 (月) | 耐久財受注・新築住宅販売が予定されていたが政府閉鎖で延期。 | 週初は4,065ドルから始まり、FOMC前のポジション調整で下落し3,981ドルへ。 |
| 10/28 (火) | FOMC初日。市場は利下げを織り込みつつ、声明文の文言に注目。 | 金は続落し3,952ドルで終値。DXYが底堅く推移。 |
| 10/29 (水) | FOMC政策発表(25bp利下げ)。 | FOMC後に金は一時反発するも声明のタカ派基調で再び売られ、終値3,930ドル。 |
| 10/30 (木) | 米GDP速報値の予定日だが政府閉鎖で延期。 | 金は戻りを試し4,024ドルまで反発したが、ドル高が続き上値を抑えた。 |
| 10/31 (金) | 個人所得・PCE・シカゴPMI予定分が延期。 | 金は4,002ドルで引け。月末の株高とドル高が続き、利回り上昇で軟調。 |
#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)
次週(2025-11-03〜2025-11-07)=見通し。政府閉鎖が長期化する場合、データ発表延期が継続する可能性がある。政策イベントと要人発言が金利・ドル・リスク資産の方向性を左右する。
| 日付 (JST) | イベント/指標 | 注目点とシナリオ |
|---|---|---|
| 11/04 (月) | ISM製造業景況指数(10月・予定) | 政府閉鎖が解除されれば発表。市場予想は50.0付近で横ばい。予想を上回ればドル高・金売り、下回れば金買い戻し。 |
| 11/05 (火) | FOMC議事要旨(10/28〜29会合)公開 | 議事要旨がタカ派なら長期金利上昇→金下押し、利下げ議論が活発なら金買い。 |
| 11/06 (水) | 雇用統計(10月)予定/ADP民間雇用 (代替) | 政府閉鎖継続なら公式統計は延期。ADPや民間推計が重視され、結果が強ければドル高、弱ければ金支援。 |
| 11/07 (木) | 米新規失業保険申請件数 | 政府閉鎖でも労働省が再開すれば発表。市場予想22万件付近。結果の強弱が金利に影響。 |
| 11/08 (金) | 要人発言・地政学リスク | FRB高官の講演や地政学ニュースに注目。利下げ継続論が強まれば金支援。 |
現時点では多くの統計が未定であり、イベントが実際に公表されるかどうかが最大の不確定要素である。投資家は米政府の再開時期やFRBメンバーの発言に敏感に反応するだろう。
#🧠 マーケットセンチメント分析
- CFTC金先物ポジション:政府閉鎖によりCFTC週次報告は「未発表」となり、最新の投機筋ネットロングは9月末の266.7千枚が最後。現状のポジションバイアスを確認できないため、テクニカル指標やETFフローへの依存が高まっている。
- ETFフロー:9月末まで続いていた金ETFへの大規模流入は10月後半に縮小し、週初は解約優勢となった。週末には小幅な流入が戻るが、総体としては過熱修正局面。
- CTA(商品投資顧問)動向:テクニカルトレンド追随型のCTAは4,080ドルを割った時点でロングポジションを削減し、4,000ドル近辺では空売りを試す動きも観測された。H4レベルでの安値切り上げが確認されれば再び買い戻しが入りやすい。
- リスクオン/オフ:米株は週次で堅調(NASDAQ +2.2%、S&P500 +0.7%)。原油は下落しインフレ懸念が後退。リスクオン環境が続く中で安全資産としての金は見劣りし、投資家はドルや株式に資金を振り向けた。
#📈 週後半に向けた変化兆候
- 実質金利の天井打ち:1.80%台で推移する10年TIPS利回りが再び低下に向かうかが焦点。FOMC議事要旨で追加利下げ示唆が強まれば実質金利が低下し金上昇シナリオ。
- ドル指数の失速:DXYが100手前で頭打ちとなり反落すれば、短期的に金の買い戻しが入りやすい。逆に100超え定着なら下落圧力が継続。
- 株式の調整:株高が連騰する中で利食い調整や企業決算の失望が出ればリスクオフに傾き、金に避難資金が流入する可能性。
- 地政学リスク:中東や東欧の緊張が高まれば安全資産需要が急増する。平穏が続けば金の重し。
#🧮 週次比較行(先週比)
週レンジ 3,886.49–4,109.33 | 週終値 4,002.28(-2.67% w/w) | 米10年実質金利 +10bp | DXY +0.85pt
#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)
-
上昇シナリオ
- 条件:FOMC議事要旨で更なる利下げや景気下振れへの配慮が示され、実質金利が低下。政府閉鎖が解除され、弱い経済指標が相次ぐ。DXYが99台半ばへ反落。
- 戦略:日足で4,020ドルを上抜ければ4,080ドル、4,120ドルを順次ターゲットにロング。損切りは3,950ドル割れ。
-
基準シナリオ
- 条件:統計発表延期で方向感が乏しく、金利とドルは高止まり。レンジ相場が継続。
- 戦略:3,950〜4,100ドルのボックス圏でスキャルピング。H4チャートのサポート・レジスタンスを活用。損切りはレンジ上下抜けで対応。
-
下落シナリオ
- 条件:DXYが100を超え、実質金利がさらに上昇。株式が堅調でリスクオンが継続。地政学リスクが後退。
- 戦略:4,000ドル付近で戻り売り。ターゲットは3,880ドル、3,820ドル。損切りは4,080ドル超え。
リスク管理として、政府閉鎖の延長や突発的な地政学ニュースなど突発イベントへの備えが必要。ポジションサイズは通常より抑え、利確・損切りラインを明確に設定する。
#⚠️ リスク要因(週末イベント・警戒材料・地政学)
- 米政府閉鎖の長期化:統計の発表停止が続けば、市場は噂や予測に左右されボラティリティが高まる。閉鎖が解消されるタイミングで溜まっていたデータが一気に公表されるため、その影響に注意。
- FRB高官発言:タカ派発言が相次げば長期金利がさらに上昇し金には逆風。ハト派なら反発要因。
- 地政学的衝突:中東情勢や東欧の緊張激化は金の安全資産需要を急増させる。一方、緊張緩和や停戦は金を圧迫。
- 株式市場の急変:米企業決算やテク株の調整が急落を招く場合、リスクオフが金を支援する。逆に強い企業決算が続けば金に逆風。
#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)
実質金利は金の一次ドライバーであり、政府統計の欠落時でも金相場を方向付ける。データ空白が続く時こそ、実質金利やドル指数、リスク資産の動向を注視することが重要である。
#🔗 参照URL(記事URL・データ出典)
- SamuraiQuant 2025-10-26 Gold週報
- Investing.com XAUUSD Historical Data
- Investing.com US Dollar Index Historical Data
- Investing.com Crude Oil WTI Historical Data
- FRED: 10-Year TIPS Rate
- Federal Reserve FOMC Press Release (2025-10-29)
- Advisor Perspectives: FOMC Rate Cut Summary
- AFP/Yahoo News: GDP Release Delayed
- Dallas Fed: Trimmed Mean PCE Update Not Published
- Associated Press: Government Shutdown Delays Jobs Report
- Investopedia: Market News (Oct 31, 2025)
- MQL5: CFTC Gold Speculative Net Positions