SamuraiQuant

2025-10-27 ドル円週報

2025-10-27 · fx
最終更新: 2025-10-27
FXUSDJPYWeekly

前週のドル円動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。政府閉鎖による米経済統計の延期や日本の新政権誕生を踏まえた相場見通し。

#🪶 はじめに(市場のストーリー)

先週(10/27〜11/2)はFOMCと日銀決定会合が同週に重なる稀なイベント週だった。9月CPIの鈍化による利下げ観測がくすぶるなか、FRBは25bp利下げと12月1日の量的引き締め停止を決定した。一方日銀は政策金利を0.5%で据え置き、2人の委員が0.75%への利上げを主張するも7対2で現状維持となった。国内では東京のコアCPIが2.8%と前月2.5%から加速し、市場予想(2.6%)を上回った。

これらのイベントを通じて市場心理は「ハト派期待から中立バイアス」へ移行した。利下げは実施されたもののバランスシート縮小停止や経済見通しの据え置きが金融環境のタイト化を強め、米10年債利回りは先週末比で8.2bp上昇し4.079%まで戻した。株式市場ではテクノロジー株を中心に上昇が続き、ナスダック指数は0.61%上昇した。リスク資産の回復と金利上昇の組み合わせによりドル円は週初の152円台前半から154円台半ばまで上伸し、金融政策判断の揺らぎを映す値動きとなった。

#🧭 今週の総括

金融政策イベントが集中するなかで、ドル円は151.54〜154.45円の広いレンジを形成し週末には154.05円で引けた。FOMC利下げは市場予想通りだったものの、声明文が中立的であったことや12月からのバランスシート縮小停止が長期金利を押し上げ、円売りが優勢となった。日銀は据え置きながらも2名の委員が利上げを主張しており、国内インフレ圧力の高まりが金融正常化への布石となる可能性も意識された。実際には米金利と株高が主導するリスクオン相場となり、東京CPIやBOJのタカ派サプライズは円買い材料として十分に機能しなかった。

#✅ 当たった点(根拠数値付き)

  • イベント集中によるボラ拡大:前週の週報ではFOMC・BOJ・東京CPIが同週に集中し、ボラティリティが高まると予想していた。実際、ドル円の週間レンジは2.91円に拡大し(先週2.80円→今週2.91円)、高値は154.45円に達した。
  • 153.2円上抜けシナリオ:予想では153.20円を超えると154.00円台への上伸が見込まれるとされたが、FOMC後に実際に153.20円を突破し154.45円まで急伸した。
  • FRBは利下げ実施も中立トーン:CPI下振れとPMI堅調のミックスからハト派バイアスとしたものの、FOMCが25bp利下げを実施しながらバランスシート縮小停止を決めることで金融環境がタイト化すると読んでいた。結果的に金利上昇とドル指数上昇(98.95→99.72)を伴う円安となった。

#❌ 外れた点(根拠数値付き)

  • BOJタカ派要因による円買い期待:東京CPI加速と2名の委員による利上げ主張は円買い材料になると想定したが、米金利上昇と株高による円売り圧力が勝り、ドル円は154円台へ上昇した。
  • 政府閉鎖によるデータ欠落の影響過小評価:GDPやPCEの公表が延期となり、民間指標への感応度が高まった。CB消費者信頼感指数(94.6、前回95.6)などが市場を動かし、週初に予想より大きな下落(10/28終値152.10円、前日比−0.50%)を誘発した。
  • 利下げによる金利低下想定:利下げ後に長期金利が低下すると想定したが、実際にはFRBの量的引き締め停止がタイト化と解釈され米10年債利回りは4.079%へ上昇、ドル円上昇に寄与した。

#📊 検証サマリー

項目データとトレンド評価
USDJPY週次始値152.76/高値154.45/安値151.54/終値154.05、騰落+1.24円 (+0.81%)。高値はFOMC後に記録。円安基調継続、ボラ拡大
主要イベント結果米CB消費者信頼感は94.6 (前回95.6→今回94.6、予想93.4)。FOMCは25bp利下げ+12月1日からの量的引き締め停止。BOJは0.5%に据え置き、2名が利上げ主張。東京CPIは2.8%(前回2.5%→今回2.8%、予想2.6%)で加速。FOMCの中立姿勢と東京CPIの上振れが混在するも、米金利・株高が勝り円売りに。
米10年債利回り週末4.079% (先週3.997%→+8.2bp)。利下げ実施にもかかわらず金利上昇=タカ派解釈
ドル指数 (DXY)週末99.72 (先週98.95→+0.77pt)。ドル全面高による円安を裏付け
株価・リスク資産S&P500 +0.26%、ナスダック +0.61%、NYダウ +0.09%。WTI原油 +0.68%、金先物 −0.49%、ビットコイン −0.31%。テック株主導のリスクオン継続。金下落はドル高を補強。

#📅 今週の振り返り(実績)

今週(2025-10-27〜2025-11-02)=実績

日付 (JST)主要イベント・結果ドル円の値動きと因果
10/27 月特段の指標無し。米株は決算好調で続伸。リスクオン優勢で円売り。始値152.76→終値153.17(+0.27%)。
10/28 火米CB消費者信頼感指数は94.6と前回95.6から低下するが予想を上回る。FOMC前の様子見が広がる。指標悪化によるリスク回避で一時151.76円まで下落、終値152.10(−0.50%)。
10/29 水FOMC初日。金利先物は25bp利下げをほぼ織り込む。イベント待ちで上下に振れ、高値153.06円/安値151.54円。終値152.73(+0.41%)。
10/30 木FOMCは25bp利下げと12月1日からのバランスシート縮小停止を発表。BOJは0.5%据え置き(7対2)。東京CPIは2.8%へ加速。利下げ決定後に声明が中立寄りと受け止められ米金利上昇。円売りが強まり152円台から154円台半ばへ急騰、終値154.13(+0.93%)。国内CPI上振れとBOJのタカ派票は一時円買いを誘ったが相殺された。
10/31 金イベント消化でポジション調整。米株は小幅続伸しリスクオン継続。一時154.41円まで上昇後は利益確定で154.05円へ小緩み(−0.04%)。金利低下にもかかわらず高値圏を維持し、介入警戒が意識される。

#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)

次週(2025-11-03〜2025-11-09)=見通し

基本観FOMC後の値動きが一服し、米国民間統計と雇用統計に焦点が移る。政府閉鎖の影響で公式統計の遅延が続くため、ISMやADPといった民間指数が為替の触媒になる。また、日銀議事要旨や家計調査など国内指標が日本の金融政策期待を左右する。米金利と株価動向を軸にドル円は153円台後半〜155円台前半で推移しやすいが、雇用統計が大きくブレると151円台へ急反落する可能性もある。

#イベントカレンダー(JST)

  • 11/3(月):日本は文化の日で休場。中国10月製造業PMI、ユーロ圏・米国10月製造業PMI確報、米10月ISM製造業景気指数など。
  • 11/4(火):米9月貿易収支、米9月製造業新規受注、米JOLTS求人件数。オーストラリア中銀政策金利発表。
  • 11/5(水):日銀9月会合の議事要旨、10月マネタリーベース。米10月ADP雇用統計、米10月ISM非製造業景況指数、米国MBA住宅ローン申請指数。ドイツ・ユーロ圏サービス業PMI確報も要注目。
  • 11/6(木):BOE政策金利、米新規失業保険申請件数、米7-9月期非農業部門労働生産性指数。日本では毎月勤労統計。
  • 11/7(金):日本全世帯家計調査、米10月雇用統計(非農業部門雇用者数/失業率)。米11月ミシガン大学消費者信頼感指数、10月中国貿易収支も予定。
  • 11/9(日):広島県知事選投開票、中国10月CPI・PPI。

#テクニカル展望

  • W1:上昇チャネルの上端を試す局面。154円台前半は1990年代の高値ゾーンであり、終値ベースで維持できれば155.50円まで上値余地が広がる。一方、153円を下回ると週足の押し目候補である152.0円、さらに151.4円がサポート。
  • D1:短期移動平均線(5日)が25日線を上回る強いトレンド。ストキャスティクスは過熱圏にあり、153.5円割れで短期調整が始まる可能性。上値の目処は日足ボリンジャーバンド上限の154.80円。
  • H4/H1:153.80円〜154.00円にサポートが密集。ADPやISMに対して順張りのブレイク狙いが有効だが、雇用統計直前はポジション縮小を推奨。上値は154.70円、下値は152.80円。
  • M15:イベント前後にスパイクが増加しやすい。終値ベースでのトリガー確認を優先し、154.30円〜154.50円での短期売り/買い分岐に留意。

#ファンダメンタル・シナリオ

  • 円安シナリオ:米ISMや雇用統計が予想を上回り、米金利が再び4.1%台へ上昇する場合。株式市場が決算シーズンを追い風にリスクオンを継続し、日銀議事要旨が慎重姿勢に留まれば、ドル円は155円台突破を試す。介入警戒感が高まるためストップ狩りを伴いやすい。
  • 基準シナリオ:ISMや雇用統計が概ね予想並みで金利は安定。ドル円は153.50〜154.80円のレンジで推移し、イベントごとに短期的な上下動を繰り返す。米政府閉鎖の継続によるデータ欠落で、個別材料への感応度が高まる。
  • 円高シナリオ:雇用統計が大幅に下振れし、ISMも50割れを継続する場合。米金利が急低下しDXYが下落、株価が利益確定で崩れると円ショートの巻き戻しが進む。153.0円割れで152円台前半まで調整し、151.40円を下抜けると150円台前半への窓も視野。

#🧠 マーケットセンチメント分析

CFTCのIMM通貨先物では円ショートの積み上がりが続いており、投機筋はドル高トレンドに便乗している。FOMC利下げ後の長期金利上昇や株価の堅調がこのポジションを正当化しているため、急激な巻き戻しは起こりづらい。一方、BOJ内で利上げを主張する委員が現れたことや、東京CPIの上振れが円買い勢を下支えしている。実需筋は月末の決済に伴いドル買いを進めたが、介入警戒が高まる154円台では実需の売りが増えやすい。ヘッジファンドはイベント週前後でポジションを軽くしており、週後半は新たな材料待ちの様子だった。

#📈 週後半に向けた変化兆候

  • 米ISMや雇用統計が予想を下回り、米10年債利回りが3.9%台に戻る場合は円ショートの巻き戻しが始まる。153.20円を下抜けると短期筋の投げが加速し152円半ばまでの調整が想定される。
  • 日銀議事要旨や家計調査がタカ派寄りとなり、国内インフレ圧力が一段と高まった場合は円買いに傾きやすい。逆に、サービス価格の鈍化が確認されれば再び円売り材料となる。
  • リスク資産が調整入りし米株が下落する場合、リスクオフの円買いと金利低下のドル売りが重なり急落する可能性がある。

#🧮 週次比較行(先週比)

先週(10/20〜10/26)との比較:

項目先週今週変化
週レンジ150.27–153.06円 (幅2.80円)151.54–154.45円 (幅2.91円)+0.11円幅拡大
週終値152.81円154.05円+1.24円 (円安)
米10年債利回り3.997%4.079%+8.2bp
DXY98.9599.72+0.77pt

#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)

  • 押し目買い戦略:153.50円前後まで下落した場面では押し目買いを検討。ストップは152.80円割れ、ターゲットは154.80円→155.50円。
  • ブレイクアウト戦略:154.70円の上抜けを確認したら買い増し。雇用統計前はポジションサイズを半分に抑え、長い髭への備えとしてトレーリングストップを活用。
  • リバーサル戦略:153.00円割れ、特に152.80円を終値で下抜ける場合は短期的に売りへ転換。目標は152.00円、さらに151.40円。米雇用統計が弱い場合は151円台前半まで。損切りは153.50円超えに設定。

#⚠️ リスク要因(週末イベント・警戒材料)

  • 為替当局による介入:154円台半ば〜155円台では当局の口先介入や実弾介入が出る可能性が高い。FOMCや雇用統計直後は相場が薄く、介入効果が増幅されやすい。
  • 米政府閉鎖の長期化:GDP・PCEなど公式統計の発表が延期され、民間指標に対するサプライズ敏感度が高まる。突発的なデータ欠落リスクに注意。
  • 地政学リスク:中東情勢や米中通商協議などのヘッドラインがリスクオフを誘発する可能性。原油価格の急騰はインフレ再燃→米金利上昇を通じて相場を一変させる。

#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)

中銀イベント週では金利政策の方向性だけでなく、資産買入れやバランスシートのスタンスが長期金利と為替に大きな影響を及ぼす。利下げでも量的引き締め停止がタカ派と受け止められ円安が進行したことから、金融政策の全体パッケージを読み解く重要性を再認識させられた。

#🔗 参照URL(記事URL・データ出典)