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2025-11-03 EURUSD週報

2025-11-03 · fx
最終更新: 2025-11-03
FXEURUSDWeekly

前週のEURUSD動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。米欧の政策スタンスと景気サイクルの差を踏まえた相場見通し。

#🪶 はじめに(市場のストーリー)

10月末のFOMCでは政策金利が0.25ポイント引き下げられて3.75〜4.00%となった一方、声明では「経済活動は緩やかなペースで拡大し、インフレはやや高止まりしている」とし、データ次第で政策スタンスを調整すると強調された。こうした“ハト派的利下げ”にもかかわらず米長期金利は週初にやや上昇し、EURUSDは1.15台前半へ下落してスタート。ところがユーロ圏のHCOB複合PMIが51.2から52.5へ、サービスPMIも51.3から53.0へ急上昇し、過去29カ月ぶりの高水準を記録したことで欧州景気への期待が高まりユーロ買いが強まった。一方、米国では政府機関閉鎖の長期化を背景に消費者信頼感指数が53.6から50.3へ急落し、長期インフレ期待も低下。米国のデータ難による政策不確実性と株式市場の調整を背景にリスク資産への選好が低下し、ドルは週末にかけて軟化した。結果、EURUSDは週後半に急反発し1.156台へ戻して終了した。

#🧭 今週の総括

前週(2025-11-03〜2025-11-09)のEURUSDは1.14692〜1.15912の範囲で推移し、週末終値1.15643(前週末比 +0.24%)で引けた。序盤はFOMC後の米金利上昇と欧州小売統計の失望でユーロ売りが進んだが、ユーロ圏PMIの大幅改善や米消費者信頼感の急低下により流れが反転。米独10年債利回りスプレッドは147bpから145bpへ縮小し、ドル指数(DXY)は約0.15%下落した。株式市場ではAI関連銘柄の利益確定売りからナスダック指数が週間で約3%下落し、リスク資産への投資意欲が後退。全体として「米景気指標の悪化と欧州景況感の底入れ」がユーロを下支えする一方、政策不透明感と政府閉鎖リスクが上値を抑える構図だった。

#✅ 当たった点

  • レンジ予想の的中:10月27日付週報の「1.15〜1.17レンジ」シナリオに沿った値動きとなり、実際の高値は1.15912、安値は1.14692だった。
  • 米金利上昇による序盤のユーロ安FOMC後に米10年債利回りが4.13%へ上昇し、EURUSDは1.15割れを試す下押し。想定どおり米金利がユーロ上値を抑えた。
  • ユーロ圏PMI改善への注目:HCOB複合PMIが51.2→52.5、サービスPMIが51.3→53.0へ上昇し、週報が指摘した「景況感底打ち」が裏付けられた。

#❌ 外れた点

  • ユーロ安シナリオの過度な警戒:米経済の底堅さを背景に1.14台までの下落も想定していたが、ユーロ圏PMIの急回復と米消費者信頼感の急落でユーロが買い戻され、1.15割れは限定的だった。
  • 欧州小売指標の影響を過大視:ユーロ圏小売売上高(前月比 -0.1%)の弱さが相場の主導材料になると見たが、市場はPMIや金利差を優先し、指標の影響は短命だった。

#📊 検証サマリー

指標 / イベント前回 → 今回(予想)トレンド評価
HCOBユーロ圏複合PMI51.2 → 52.5(予想 52.2)改善・景気拡大加速(ユーロ買い)
HCOBユーロ圏サービスPMI51.3 → 53.0(予想 52.8)17カ月ぶり高水準で新規受注が急増(ユーロ買い)
ユーロ圏小売売上高(前月比)0.0% → -0.1%(予想 0.0%)若干悪化・消費減速(ユーロ売り)
ドイツ製造業新規受注(前月比)-1.8% → +1.1%(予想 +1.0%)予想以上の反発(ユーロ買い)
米ISMサービス業指数50.0 → 52.4(予想 50.8)サービス活動の強さを示しインフレ圧力が続く(ドル買い)
米ミシガン大学消費者信頼感指数53.6 → 50.3(予想 53.2)政府閉鎖で3年半ぶり低水準へ急落、長期インフレ期待も低下(ドル売り)
米10年債利回り週初 4.13% → 週末 4.11%横ばい〜小幅低下
独10年債利回り週初 2.66% → 週末 2.67%やや上昇
米独10年スプレッド147bp → 145bp-2bp(ユーロ支援)
DXY99.71 → 99.56-0.15%(ドル軟化)

#📅 今週の振り返り(実績)

日付 (JST)主なイベント・結果EURUSD反応
11/3 (月)ユーロ圏小売売上高 -0.1%、独新規受注 +1.1%。米10年債利回りが4.13%まで上昇。始値 1.15335 → 終値 1.15211(-12.4pips)。弱い小売と米金利上昇でユーロ売り。
11/4 (火)ユーロ圏複合PMI 52.5、サービスPMI 53.0。米ではFOMCメンバーがタカ派発言。始値 1.15211 → 終値 1.14843(-36.8pips)。好調PMIにもかかわらずドル買い優勢。
11/5 (水)米ISMサービス 52.4。始値 1.14842 → 終値 1.14927(+8.5pips)。強い米指標に下押しされつつ小幅反発。
11/6 (木)米長期金利低下と株安によるリスクオフでドル売り。始値 1.14926 → 終値 1.15453(+52.7pips)。短期筋の買い戻しで急反発。
11/7 (金)米ミシガン大学信頼感 50.3まで急落。始値 1.15466 → 終値 1.15643(+17.7pips)。ドル安が進み1.156台で引け。

#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)

S&P Global の「Week Ahead Economic Preview」によると、今週は各国のGDPやインフレ統計が目白押し。特に米CPI・PPIとユーロ圏CPI確報、ZEW景況感、英国GDPなどが注目される。

  • 11/11 (火):ドイツZEW景況感指数、英国労働市場統計、日本機械受注、中国資金供給統計。
  • 11/12 (水):ユーロ圏CPI確報、イタリア鉱工業生産、S&Pグローバル Business Outlook 調査。
  • 11/13 (木):米10月CPI、週間新規失業保険、英国GDP速報、ユーロ圏鉱工業生産。
  • 11/14 (金):米PPI、小売売上高、ミシガン大信頼感速報、ユーロ圏雇用者数とGDP第2速報、ドイツ卸売物価指数、中国工業生産・小売売上高。
  • 11/15 (土):カナダCPI。

#シナリオ

  1. ユーロ高シナリオ:米CPI・小売が予想を下回りインフレ鈍化が確認され、ユーロ圏ZEWや鉱工業生産が改善すれば、米金利低下と欧州景気期待で1.16〜1.17台へ上昇も。
  2. 基準シナリオ:米インフレが予想通りで方向感に欠ける場合、1.15〜1.16のレンジで推移し、米独金利差やDXYに連動する短期レンジ取引が主戦略。
  3. ユーロ安シナリオ:米CPI・小売が強くFOMCメンバーがタカ派姿勢を維持すれば米金利が再上昇し、1.15割れから1.14台へ下落する可能性。中国やドイツ指標の弱さもユーロ売り要因。

#🧠 マーケットセンチメント分析

IMMポジションは直近で小幅なユーロ売り越しに転じており、投機筋はFRBのタカ派姿勢と欧州景気減速リスクに備えていた。ユーロ圏PMIの急反発で短期勢が買い戻しを迫られ、週後半にユーロが急伸。米国では政府閉鎖で公的指標が乏しく、民間指標や企業コメントに過敏。株式市場ではAI関連の利食いでナスダックが週間約3%下落しリスク許容度が低下したが、消費者信頼感の急落は金利低下を通じてドル売りを誘った。投資家心理は「米景気減速と金融緩和期待」と「欧州景気底入れ」の狭間で揺れており、イベントごとにポジションが振られやすい。

#📈 週後半に向けた変化兆候

  • 金利スプレッド:米独10年債スプレッドが140bp割れならユーロ買いが加速。一方150bp超でドル買いシグナル。
  • 1.16突破の持続性:1.16台を終値で維持できれば上昇トレンド継続。1.149割れは下落トレンド再開のサイン。
  • リスク資産の方向:ナスダックや米ハイイールド債が下げ止まればリスクオン回帰とみなしユーロ追い風。逆にリスクオフ継続ならドルの安全通貨需要を警戒。

#🧮 週次比較行(先週比)

項目今週先週差分
週レンジ (H-L)1.14692〜1.159121.14914〜1.16356レンジ幅が約145pips→約122pipsでやや縮小
週終値 (EURUSD)1.156431.15410+0.24%(ユーロ高)
米独10年債スプレッド145bp147bp-2bp(縮小)
DXY99.5699.71-0.15%(ドル安)

#🎯 戦略メモ

  • ユーロロング:米CPI・小売の下振れと欧州指標改善を想定し1.1500付近で押し目買い。ターゲット1.1660〜1.1700、ストップ1.1460割れ。
  • レンジトレード:指標待ち期間は1.1500〜1.1600のボックスで逆張り。イベント前はポジション縮小。
  • ユーロショート:米CPIが上振れし米金利急伸なら1.1540割れで短期売り、ターゲット1.1420〜1.1470、ストップ1.1590超え。
  • リスク管理:主要指標発表時はスプレッド拡大が起きやすいためポジションサイズを抑え、政府閉鎖の進展や地政学ニュースにも注意。

#⚠️ リスク要因

  1. 米政府閉鎖の影響:統計欠落が続けば市場の不確実性が高まり、突発的なドル買い・売り要因となる。
  2. インフレ指標のサプライズ:米CPI・PPIやユーロ圏CPI確報が予想と大きく乖離すれば金利が急変動する恐れ。
  3. 中国経済指標:中国工業生産や小売が大幅に下振れすれば世界的なリスクオフとなりドル高要因。
  4. 地政学リスク:中東情勢の悪化やエネルギー価格急騰は欧州景気に打撃を与え、ユーロ売りを招く。

#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)

ユーロ圏景況感の回復が米金利要因を上回る局面がある。特にサービス業や新規受注の改善が持続すればユーロは底堅く推移しやすい。一方、米国の景気指標が政府閉鎖など特殊要因で歪められている点を考慮し、単一データに過度に反応しないバランス感覚が重要だ。

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