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2025-11-03 ゴールド週報(XAUUSD)

2025-11-03 · fx
最終更新: 2025-11-03
GoldXAUUSDWeekly

前週の金価格動向を振り返り、今週の主要イベントとシナリオを整理する。実質金利とドル指数、地政学・リスク資産連動を踏まえた相場見通し。

#🪶 はじめに(市場のストーリー)

先週(11月3日〜11月7日)の金市場は、米国の経済指標と政府機関の閉鎖によるデータ空白が錯綜する中で揺れ動いた。10月の米ISM製造業PMIは景況感の分岐点50を下回る48.7と前月(49.1)から低下し、製造業が8カ月連続で縮小したことが示された。一方で政府機関閉鎖の影響で雇用統計やCPIなど重要指標は公表されず、市場はインフレの先行きと政策金利の動向を見通しにくい状態が続いた。こうした不確実性にもかかわらず、サービス業PMIは52.4と前月の50から急反発し、景気の底堅さを示唆した。10年物米国債利回りは週初の約4.13%から週末にかけて4.10%前後へ小幅低下し、同期間の10年物TIPS利回りも1.82%程度から1.80%へ小幅ながら低下。ドル指数(DXY)は100台前半から週末にかけて99.6近辺まで弱含みとなり、金は前週の急落から持ち直して小幅反発した。

#🧭 今週の総括

前週の金相場は始値3,985.07ドル/ozに対し終値4,004.18ドル/ozと+0.48%の小幅上昇で引け、週間レンジは約101ドルだった。名目10年債利回りがやや低下し、ドル指数が調整したことが金価格の下支えとなった。反面、ISM製造業PMIの低下や政府機関閉鎖による指標空白は景気悪化懸念を強め、実質金利は前週比でほぼ横ばいとなった。

#✅ 当たった点(根拠数値付き)

  • ドル軟化予想が的中:米金融当局の利下げ後もドル指数の反落余地に言及していたが、実際にDXYは週初の約99.87から週末には99.60台へ低下し金価格の回復を支えた。
  • 景気指標の弱さが金に追い風:米ISM製造業PMIの低下や景気減速懸念が金価格を下支えるとの見方通り、10月製造業PMIは49.1から48.7へ低下し、景気減速観測が強まったことで名目金利が小幅に低下した。

#❌ 外れた点(根拠数値付き)

  • 実質金利低下予想は外れ:政策金利据え置き後の実質金利低下を想定していたが、10年物TIPS利回りは週初約1.82%から週末に1.80%とほぼ横ばいで推移し、顕著な低下は見られなかった。
  • 金の反発幅は限定的:前週に2.7%以上の急落だったため反発余地が大きいとの見方があったが、今週は+0.48%の小幅上昇に留まった。政府機関閉鎖で重要指標が発表されず、強いトレンドが出なかったことが要因。

#📊 検証サマリー

項目前回 → 今回(予想)トレンド評価・影響
XAUUSD週足前週終値3,990.98 → 今週終値4,004.18+0.48%上昇。DXY軟化と名目金利低下が支え。
米ISM製造業PMI (Oct)49.1 → 48.7(予想49.4)景況感悪化=景気減速観測強まり名目金利低下→金買い。
米ISMサービス業PMI (Oct)50.0 → 52.4(予想50.8)サービス業の回復=景気底堅さ示唆→金の上値を抑制。
米10年名目利回り4.13% → 4.10%約 -3bp 低下。景気指標の悪化と安全資産需要で利回り低下→金支援。
米10年実質利回り (TIPS)1.82% → 1.80%ほぼ横ばい(-2bp)。大きなサプライズなし。
ドル指数 (DXY)99.87 → 99.60約 -0.27ポイント下落。利下げ期待とリスク選好回復でドル弱含み。
WTI原油先物61.05 → 59.75-2.1% 下落。OPEC+が供給増を協議との報道で供給過剰懸念。

#📅 今週の振り返り(実績)

今週(2025-11-03〜2025-11-07)=実績

日付 (JST)主要イベント・経済指標XAUUSD終値と反応
11/3 月米ISM製造業PMI 48.7(予想49.4)。景気悪化懸念で米10年利回りが4.11%へ低下。金は3,985ドル台で始まり4,001ドルへ上昇。製造業不振とドル軟化が買い材料。
11/4 火主要指標なし。政府閉鎖継続で雇用関連データは延期。OPEC+が供給増検討と報じられ原油下落。金は高値4,030ドルから利益確定売りが出て終値3,932ドル(-1.7%)。
11/5 水米ISMサービス業PMI 52.4、FOMC議事録で高金利維持を強調。好調なサービス業指標で金は一時3,930ドル台に下落も、議事録後にドルが弱まり3,979ドルへ反発(+1.2%)。
11/6 木政府閉鎖で失業保険申請件数などが非公表。米株は閉鎖解除期待で上昇。金は3,976→3,977ドルと横ばい。米10年利回りはやや低下しDXYは99.73へ。
11/7 金暫定予算で政府閉鎖解除に合意との報。米10年TIPS利回り1.80%、名目10年利回り4.10%。ドル安が進み金は4,004ドルで週を終えた(+0.68%)。株価指数はまちまち。

#🔮 次週展望(見通し+イベントカレンダー)

次週(2025-11-10〜2025-11-14)は、米インフレ指標の再開有無が最大の焦点。閉鎖解除が間に合えば10月CPI・PPIが予定通り公表され、実質金利とドル指数の方向性が決まりやすくなる。以下は主なイベント(JST)。

日付イベント注目点
11/11 (火)米ベテランズデー(債券市場休場)流動性低下とギャップリスクに注意。
11/12 (水)米10年債入札、FOMC高官発言入札需給で金利が動けば金にも波及。
11/13 (木)米10月CPI(予定)、週間新規失業保険、実質賃金ヘッドライン+CPIコアのサプライズ方向が金のトレンドを左右。
11/14 (金)米PPI、ミシガン大消費者信頼感速報、30年債入札インフレ指標と長期債需給の組み合わせが実質金利に影響。

中国の10月物価指標や欧州GDP改定値、英GDPも予定されており、世界景気の方向感がリスク資産のセンチメントを左右する。

#🧠 マーケットセンチメント分析

  • CFTC金先物ポジション:政府閉鎖で最新データは未公表だが、直前週までは非商業のネットロングが減少傾向。高金利環境下で投機筋は慎重姿勢を維持していると推測される。
  • ETFフロー:SPDRゴールドシェアの保有残高は前週比で微増し、現物需要が下支えに回っている。
  • CTAとリスク環境:テクニカル系CTAは前週の急落を受けて一部ショートを拡大したが、今週の下落が限定的なため積極的な売り増しは見られない。株式市場は政府閉鎖解除期待と企業決算を背景にリスクオンに傾き、暗号資産も底堅い。
  • ポジション心理:市場は11月半ばのCPI/PPI結果待ちでポジションを軽くしており、実質金利の方向性が見えるまで大きなトレンドは出にくい。ファンド勢は押し目買いスタンスを維持しつつ、インフレ指標がサプライズとなれば迅速に調整する構え。

#📈 週後半に向けた変化兆候

  • 実質金利の反転:10年TIPS利回りが1.8%付近で底打ちし再び上昇する場合、ブレークイーブンインフレ率が縮小し金の上値は重くなる。逆に1.7%台に低下すると上値トライが期待できる。
  • ドル指数の方向転換:DXYが100を回復すれば金は調整局面入りの可能性。逆に99を割り込めば金買いが強まりやすい。
  • 株式市場の調整:米株価指数が主要移動平均を割るなど調整入りすれば、安全資産需要で金が買われやすい。特にS&P500の動きに注目。

#🧮 週次比較行(先週比)

項目前週(10/27〜10/31)今週(11/03〜11/07)差分
週レンジ約135ドル約101ドル-34ドル(ボラティリティ縮小)
週終値 (XAUUSD)3,990.984,004.18+13.20 (+0.33%)
米10年実質利回り約1.71%1.80%+0.09ポイント(実質金利上昇)
ドル指数 (DXY)100.4599.60-0.85ポイント(ドル安)

#🎯 戦略メモ(想定シナリオ・条件・リスク管理)

  • 上昇シナリオ:米CPI・PPIが予想を下回り実質金利が低下する場合、金は4,030ドルを超えて4,100ドル台まで上昇余地。3980〜4,000ドルの押し目買いを狙い、損切りは3,925ドル。利食いは4,100〜4,120ドルゾーン。
  • 基準シナリオ:CPIが予想通りで名目金利・ドルが横ばいの場合、金は3,980〜4,050ドルのレンジでスキャルピング対応。利益幅20〜30ドルを目安にリスク管理徹底。
  • 下落シナリオ:CPIやPPIが予想を上回り、FRB高官がタカ派姿勢を強めれば名目・実質金利が上昇し金は3,950ドルを割り込む恐れ。3,980ドル付近で戻り売り、損切りは4,010ドル。3,920ドルを割れば3,890ドルが視野。

#⚠️ リスク要因

  • 米政府機関閉鎖の再燃:暫定予算は短期合意にすぎず、再びシャットダウン危機が浮上すれば経済指標の公表が止まり市場の不透明感が高まる。
  • 地政学リスク:中東やウクライナ情勢が悪化すれば安全資産需要で金は急騰する一方、原油価格の乱高下が実質金利に影響を及ぼす。
  • 中国・欧州の景気指標:中国物価や欧州GDPが世界景気の減速を示した場合、リスクオフが加速し金買いが強まる可能性。

#🪶 今週の教訓(Lessons Learned)

金相場の主要ドライバーは実質金利とドル指数である。製造業PMIの悪化に対してサービス業の回復や政府閉鎖解除期待が相殺し、実質金利はほぼ横ばいだったが、ドル指数の下落が金の小幅反発をもたらした。今後のインフレ指標が金利とドルに与える影響を見極めることが重要。

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